二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re:APH(番外編)空想でサンマリノとローマ帝国過去物語 ( No.13 )
- 日時: 2011/11/09 18:22
- 名前: 千李 ◆2wQbNMYBsg (ID: rCT1hmto)
『ひぐっ、うっく……』
『サエリ、泣き止むんだ』
『っく、ひっく……』
『サエリ』
『っ、げほっ、うっ……っく……!』
『……はぁ……』
彼の問い掛けに答える事もなくただ泣き続けるボクを見た後、師匠は重い溜息を零して黙ってこちらへ歩いて来る。
(あ……)
師匠は膝をついて座りボクの両腕の間に手を通してそのまま自分のほうへ引き寄せると立ち上がってボクを抱き抱えた。
『今回だけだぞ?』
師匠は苦笑してボクの涙を拭いながら言った、ボクはそのまま黙って頷く、すると師匠は黙って頭を撫でてくれる。
師匠に抱き抱えられる瞬間、視界が一気に高くなって師匠と同じ目線になる、その瞬間が師匠と同じ背丈になったようで嬉しかった、対等みたいでいられるから。
温かくて大きな腕、温もりが溢れる大きな手、優しい笑みを浮かべてくれてその大きな体で包んでくれる師匠、ボクはそんな師匠に頭をなでられるのが大好きだった。
だけど、ボクは時々悲しくなる、師匠に拾われてボクはずっと一心不乱に師匠を追い続けてきた、その大きな背中を、だけど追いかけても追いかけても、師匠の背中の端しか見えない。
いつかボクの頭を包んでくれるくらいの大きな手にボクもなりたいと思っているけど、それは出来ない、理由は分からないけど、何と無く感じていた。
『師匠』
『ん?』
『大好きです!』
『ん』
そう言うと師匠はにっこり笑ってボクの頭を撫でてくれる。
--------------だけど、そんな師匠ももういない。
「サエリー!」
「兄さん」
師匠が最後まで心配していたあの人は、今でも元気です、師匠が亡く(無く)なって暫く経った時、一人で泣いていたボクを拾って育ててくれました、ボクにとっては大切なお兄さんです。
「どこ行くの?」
「ちょっと買い物」
「俺も行かなくて平気か?」
「平気だよ」
二人のお兄ちゃんは、とてもボクを大切にしてくれています、時々過保護な時もあるけど……。
「はぁっ……温かいな……」
昔から弱くて、意気地なしですぐに諦めるボクは、まだ心の片隅にいます、だけど師匠のお陰で少しだけ強くなった気がします、今でも、ただただ師匠の背中を追いかけています。
「すみません、この花とこの花とこの花で花束をお願いします」
「あらサエリ様じゃないか、ちょっと待っててね」
綺麗な物や美しい物、綺麗な女性が好きだった師匠、師匠が好きだったお花も、なぜか数千年も経つのに覚えています。
「有り難う御座いました」
「それでは、失礼します」
小さい頃からいつも師匠の背中を見てきたボクは下を見ないで上を見上げていたのでよくつまづいて転んでいましたね。
「あっ!」
それは相変わらずで、たまに空だけを見上げていてよくつまづいて転んでしまいます。
「っ、いった……」
まだまだボクは弱いので、時々泣きそうになります、だけどそんな時は。
『サエリ、泣かないで、立つんだ、お前なら、出来る』
そんな師匠の言葉を思い出して、涙を堪えて立ち上がります、そうすると、不思議とまた一歩強くなったような気がするんです。
海とか高い所にいつも連れて行ってくれて沢山の事を教えてくれた師匠、そんな貴方のお墓は高い高台で海が一番綺麗に見える場所にあります。
「お久しぶりです、ローマお爺ちゃん」
貴方とは血縁とかそんな関係が一切ない、と言っていたけど、ボクには何と無く貴方が祖父という事が分かりました、だけどそれを言うと貴方は遠くへ行ってしまうような気がしてずっと師匠、と呼び続けました。
「貴方がいなくなってから何千年と経ちましたね、ボクもあの頃と比べたらだいぶ強くなったと思います」
強くなりすぎて、大きくなりすぎて死んでしまったお爺ちゃん、ボクもそんなお爺ちゃんに憧れて背中を追い続けました、だけど、そんなお爺ちゃんももういません。
「今でもまだ戦いがある所はあります、だけどボクは頑張って立ち向かいます、フェリシアーノとかロヴィーノは相変わらず白旗振ってるけど、でも、それはまだ自分が未熟だという事を言っている事、まだ相手の戦力のレベルではない事、なのかな……」
そっとお爺ちゃんのお墓に花束を置く、柔らかい風が吹いて木々や花を揺らしそっとボクの髪を撫でる。
「……ぁ……」
一瞬だけ、本当に一瞬だけお爺ちゃん、師匠に頭を撫でられたような気がした、ゆっくりと目を閉じる。
「師匠がいなくなってからボクを守ってくれる人はいないと思っていました、だけど兄さんやお兄ちゃんがボクを拾ってくれたお陰でボクには新しい家族が出来ました」
へタレで、臆病だけど何が何でもボクを守ってくれる兄さんとお兄ちゃん、守って貰っている時だけ、ふと師匠の事が脳内に浮かびます。
「師匠、貴方はもうこの世にはいませんが、ボクは今でも貴方の背中を追い続けています、いつか、大切な人を自分の力で守れるように、だから師匠、ボクがいつか、貴方の背中を追い越して、手も師匠みたいに大きくて、暖かい手になった時、また貴方の手でボクの頭を撫でてくれますか? 良くやった、と褒めてくれますか? あの大きくて優しくて温かい腕で抱き締めてくれますか?」
自然と瞳から涙が零れ落ちた、ゆっくりと目を開けて空を見上げ、手を空に突き上げる、まだ小さなボクの手の指の間から白い雲がゆっくり、ゆっくり流れていく。
「いつか、立派な国になって、兄さんやお兄ちゃん達を守れるような、そんな大きな国に、存在に、師匠みたいに大きな背中と手を持てるように、日々訓練を頑張ります、だから、たまにで良いので、見守って下さい。ボクが辛くて泣きそうになったら、またあの言葉を言って下さい、そのたびにボクは強くなります」
ザァッと風が吹いてボクを包んだ、その瞬間に師匠が現れたような気がして、そのままボクを大きな腕で包んでくれて、優しく頭を撫でてくれる、ボクが笑うと、師匠も笑みを浮かべてこう言ったような気がした。
-----------------------頑張れ、お前はきっと立派な国になれる。
と。