二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン〜心に灯る星〜【世界で輝く星】 ( No.261 )
日時: 2012/07/25 15:00
名前: 夜桜 (ID: KY1ouKtv)

 四十二話「記憶の戻り」

「みんな気合い入ってるね」
「そりゃ、予選もあと1試合。相手はイタリアだからね」
「フィディオが相手だから」
そらに続きかがりが言う
「んー。ゆうりーカルテ」
「はい。今のところ健康状態に異常はありませんよ」
「そう。なら良いわ」

「私は、選手より気になる子がいるんだけど」
そらが言うとかがりが答える
「冬花?」
「冬花ちゃん。何があるんですか?」
冬花のことを聞かされていないゆうりが疑問を言う



「練習試合?あの子たちに任せておいて大丈夫よ。私は別にすることがあるから」
そらはその日グランドには現れなかった



「そらちゃん、どうかしたのでしょうか?」
「冬花の心配とかしてる前に…。アンタが壊れないかが、心配よ」




無音の部屋
唐突に響く音
「どこから…病院?」




病院で走ってはいけない。静かにしていなければいけない
だが、今の彼女にそんな常識は伝わらない

「円堂君!監督!冬花はっ?!!」

「記憶が…」
「記憶が、戻ったの?それで、ショックを」
そらは自己解決をする
「私は、お前が、お前たちが一緒にいるなら、冬花も本当の自分でいれると思っていた。だが…」
「俺に何かできる事はないんですかっ!」
「ない。悲しみを克服できるのは冬花自身だけ。だが、その冬花がこれでは」
「(誰が決めたの?無理って。冬花が乗り越えられないって誰が決めたの)」


「私はずっと悩んでいた。命を救うためとはいえ、催眠療法を選んだ自分の行為は正しかったのかと」
監督が言うとすべてを見据えたような冷たい瞳をしたそらが声を発する

「そうですね。監督がした事は間違っていたかもしれません」
「そらっ」
円堂が監督がそらを見る
「監督は…記憶を消す、それ以外の方法で冬花に生きる希望を与えるべきでした」
冬花を見ながらそらは続ける
「私は…冬花の様に心を殺して、生きる理由を無くしても必死に生きてきた人たちを知っています
 冬花も、きっとそうできたはずです。きっと…辛さも悲しみも苦しみも乗り越える力を持っていたはず」

「だが…仕方がないのだ。冬花にはもう1度催眠療法で新しい記憶を植え付ける」
「それって、冬っぺがまた、俺やみんなのことを忘れるってことじゃ」
監督は頷く
「冬花を救うには、それしかない」
「(誰が決めたの。それしかないって、忘れる以外ないって、誰が…)」

「冬っぺ、俺は覚えていたい!楽しいことも辛いことも全部覚えていたい!冬っぺだってそうだろっ?!」
「円堂、冬花にお前の声は届いていない」
監督が言うとそらは監督を冷たく見て言う
「監督、誰が決めたんですか?届いてないって、届かないって」
円堂はサッカーボールを冬花に触らせる
「サッカーボールだ。あんなにマネージャーの仕事、楽しくやってただろ?サッカー好きなんだろ?」
「頼っていいの。寄りかかっていいの。転んだって、躓いたって、震えながらでも
 自分の足で立ってさえいれば。それでいいの」
そらが涙を溜めながら言う
「冬っぺ!なぁ、冬っぺ!!」
「冬花!!」
監督は携帯を取り出す
「東京の先生と連絡を取る」

「冬っぺ。サッカーってさ、楽しいことばかりじゃない。辛いこともある
 だけどそれを一緒に乗り越えていくのが仲間なんだ!」
「寄りかかっていいから、頼っていいから。それに応えるのも、仲間だから」
円堂、そらが言う
「言っただろ?冬っぺは今もこれからも大切な俺たちの仲間だ」
「立ち止まっていいの。休んでいいの。その時は私たちが背中を押すから、手を取って引っ張るから…
 私たちが、仲間が友達が、ちゃんといるから」

円堂とそらの涙が冬花に落ちる


「な、か、ま」
微かな声が聞こえた
「な、かま」
先ほどまで失われていた瞳の光
沢山の涙を流しながら


「はい、久遠です先生にお願いしたいことが」
監督が言いかけて止まる
誰かの手が監督の手を握っていたから
反射的に振り返るとそこには失われたはずの光の籠った目をした冬花だった
「やめて。私、忘れたくない」

「すごく、悲しくて辛くて苦しいことを思い出したけど、でももう忘れたくないの。守君やそらさん、大切な仲間たちのことを」
涙を流し冬花が訴える
「私は、お前が心配なんだ」
「大丈夫。お父さんが守君がそらさんが…みんなが仲間がいるから」



「ずっと、私を守ってくれてありがとう。お父さん」






「監督。言い過ぎました。だけど…私は間違った事を言ったとは思っていません」
立ち去ろうとしてそら立ち止まる

「あ、監督1つだけ。監督がその時できる最前の方法で冬花を救おうとした…それは否定しません」