二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:  冬結晶. *inzm・東方小説集* ( No.102 )
日時: 2012/03/05 20:45
名前: 紅闇 ◆88grV3aVhM (ID: dNKdEnEb)
参照: 返信100行った……だと? うん、幻覚だね


 二章.2話











「——……おい、……−ナ。ったく、いつまで倒れてるのか」

「いやぁ、あの急降下は並の人間じゃ耐えられないだろうけどねぇ」

「あ? 私の弟子が並だって?」

「どうしてそこで怒るのさ……痛ッ、痛い痛い、アンタのグーは痛いって!」


 やけに頭上が騒がしい。片目を開けると、いきなり眩しい光が飛び込み、驚いてまた目を瞑る。
 些細な変化に気付いたのか、頭上の人間は、カーナを見下ろして言った。


「——怖がるな、臆病者」

「あははは、……<夢幻水流>」


 女の手から放たれた水の流れは、無慈悲にもそこに倒れているカーナの顔面に容赦なく浴びせられた。

 真冬並みの水の冷たさに、一瞬怯み—— 




 勿論、そんな事をされて黙っている筈も無く。


「うわああああぁぁぁッ!」


 一瞬で意識が戻ったカーナは、悲鳴とも叫びとも取れる大声を出しながら跳ね起きた。


「おお、起きた」

「遅いお目覚めだね。——早く行かないと、大会エントリー希望者の枠が埋まっちゃうよ?」

「……えんとりぃ? て、あれ——」


 カーナは、自分の頬を触る。
 顔どころか髪さえ、一滴たりとも水は零れていなかった。

  


   *




「じゃあお聞きしますお師匠様。私を突き落とした理由、あれは?」

「面倒だな……ああ、適任が居る。賢者様にでも頼もうか」

「えー? ——んまあ良いけど。何て言えば良いのかな、この浮遊島は皆が見ている空とは違うんだ」


 三人は“その国”の大通りを歩いていた。
洋風造りの町並みは閑散としており——降り注ぐ太陽の光が空回りするような程——他に生きている者の気配が感じられない。
 白昼の静けさか、それにしたって可笑しいのではないか。そう思いながら、茜の隣を歩く女の話に耳を傾ける。


「この宙に浮かぶ島は、君達が居る世界とは異なる場所にある」

「異なる……、次元が違うって意味ですか?」

「いや、そう難しい事じゃない。異なる世界に“居る”、そう“思った”瞬間にこの島はもう“移動して”いる」

「…………」

「まあそんなもんさ、人の考えなんて」


 もっと確実な根拠は無いのだろうか。
と、そこでその考えを終了する。名前は知らないが、きっと彼女も茜の知人だろう。人間、似たもの同士が集まるのだ。
不可解な事はそのまま不可解にしておいた方が面白いとか何とか言い、はぐらかされる。ならこっちだって聞いてやるものか!


「——……あー、分かりましたよ。私が落ちたあの場所は、“偶然にも”この島を繋ぐ扉だったと言う訳ですか」

「そう。結構色んな場所に隠されてる……いや“隠した”、あたしが」


 そう言い、女は白レンガの歩道に反射する光が眩しいのか目を細め、口を閉じた。
逆にカーナは目を見開き、自分の耳を疑った。——彼女は今何と言った?
 そんな様子を面白がって見ていた茜は女の肩にポンと手を置く。


「紹介してやろう、彼女はライディ・ナイト。この国の言葉で言うなら浮遊島の賢者。私達が解る言葉で言うなら……









                                               ……浮遊島の統治者」