二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:  冬結晶. *inzm・東方小説集* ( No.107 )
日時: 2012/03/15 20:05
名前: 紅闇 ◆88grV3aVhM (ID: dNKdEnEb)
参照: 返信100行った……だと? うん、幻覚だね




 3話




「と……統治者!?」

「バーカ。別にこのタイミングで言わなくたってさ……」

「情報は先に教えるのが吉だ」


 ライディは肘で茜を軽く小突いた。
 当の本人はまるで何もされていないように振る舞い、それを無視する。


「お師匠様……凄い人と面識があるんですね……」

「んまあ、あたしが賢者を引き継ぐ前だったし。特別な目で見られたくないから服装も変えてないし」

「馬鹿なんだよ、お前は。せっかくの権力を使って思い通りにすれば良いものを」

「一番やらなそうな奴が何を言うか」

「五月蝿い」

「おーこわ。ほぼ仕事は任せっきりだからね、今の内に遊ぶのさ!」


 彼女には“威厳”というものが感じられない。素直にそう思ってしまったカーナ。
畏れられる代表者も良いが、国民と同じ立場で居る代表者も人気があるのだろうとも考えた。

 あ、と呟くとカーナは何を思ったか、茜を呼び小声で言った。


「賢者って事は……お師匠様」

「ああ。覚えていたか。賢者……今は名乗る者も少ない名。不名誉だからだ」

「理由は、あれですよね。賢者に共通して居る事が……」






「——……“大体が『異常者』と呼ばれる立場の人間達だった”」














         * 








 その昔。ある国のある王が人を殺してしまった。理由は自分に逆らうから、と言うなんとも単純明快でくだらない事。
殺された人間は、国に対して大きな発言力を持ち、民衆からも慕われていた。王よりも、と言っても過言では無い。
小さな無いものねだり。王は自分の立場を危うくする人間を——自分の手では下していないが——部下に命令し、ナイフで胸を一突きした。

 対する民衆の反発は大きかった。元々、王は独裁社会に似たものを築いていた為、溜めていた不満が一気に爆発したのだ。


 耐え切れなくなったのか、逃げ続けた王は自ら水中に身を沈める。




 そして、王は『賢者』とも呼ばれていた——……


 今でこそ使われないが、昔は人とは思えない行動をした人間を、皮肉を込めて『賢者』と呼ぶ。勿論、それが偉い立場に居る人間のみにだが。







       *







 空に住む人間は、地上の事を知らないのか。





    ——不名誉である。






       *







「今日は地上の人間と交流を深める為、“交流闘争大会”を行うんだけど……」


 ライディが困った顔で指し示す先。

 今までの静けさとは正反対の、その人の多さ。ガヤガヤと響く喧騒がそこにあった。



「……あ、今までの人気の無さって」

「そう。今までこんな事は無かったからかな。観客も入れてほぼ全員が家を出払って此処に集まってる」

「人口はそこまで多く無さそうだ」


 通ってきた道もかなり広かったが、これまでとは桁違いの大きな広場だった。周りを囲む様にして設置されている観客席。
だが、足元の地面は変わらずレンガ造りであり、所々欠けている所もあり。観光に来るには良い雰囲気が出そうだが、戦いの場としては少々準備不足な気がする。
青い空に映える真っ白な屋外テントも見え——その前にあそこが本部なのか、テントを中心に沢山の人が集まっていた。


「あのテントがエントリー希望する場所。そろそろ枠が埋まるから急いだ方が良いよー!」

「分かりました!」

「じゃああたしは審査員なんで。また後で会えたら!」


 自分より身長が倍はありそうな巨漢の男達をものともせず、突風の様に駆けていき、あっという間に人込みに姿を消したライディ。


「もう居なくなっちゃった……」

「……良い奴なんだがな」

「じゃあ、並びます? 丁度列がすぐそこまで伸びてきてますし」

「あ? お前、エントリーするのか?」

「え? お師匠様が出るんじゃ無いんですか?」

「…………」

「…………」

「……まあ、一応並んでおくか。後で決めれば良い話だ」

「はあ、良いですけども」


 二人は顔を見つめ合い苦笑いすると、盗賊の様な衣装に身を包んだ女性の後ろに並ぶ。
どうやらまだ並ぶ人間が居たようで、その後すぐに、茜とそう歳が変わらなそうな女が来る。こう見ると、本当に色んな人間が集まったものだ。


「お師匠様、雲の上の人間はどの位強いんですかね?」

「さあ、戦いとは無縁の人間共だからな。案外弱いかもしれん」


 かなり適当な返事をした茜だが、カーナは何も気にしていない様に一つ頷くと、素直に列の前を見る。

 逆に茜は落ち着かない様子で辺りを見回す。どちらが年上なものか。























 ……——そして、ふいに。























 先ほどの楽しむ表情とは打って変わり、








「…………」








 誰にも悟られぬよう、顔を引き締めた。






 その理由とは? ……——否。
















 勿論、誰にも“自分が背中から刃物を突き付けられているという”事実を判らせない為だ。







 異変を感じ取らせない為に、小声で聞く。






「…………誰だ」








































「……——甘いですね。“最新破壊兵器を持つ浮遊島住人の恐ろしさ”を、貴方は何も知らない」