二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 魔道の世界--旅人達は-- *稲妻小説* ( No.12 )
- 日時: 2011/11/23 21:48
- 名前: 紅闇 ◆88grV3aVhM (ID: dNKdEnEb)
- 参照: ただいま戻っちゃったよ!
5話
魔道は、人々の暮らしを発展させると共に、生活に危機をもたらすようになってしまった。
神々が与えたとされるその力は、人々を甘やかし過ぎたのだ。
個人が持つ力は制限できないようになってしまい、各地で暴走事故が起こった。
暴走した人間は自我を忘れ、魂が抜けた。もはやただの抜け殻だった。
これに世界は混乱した。哀れな人間は、『生き残る』としか、考えが無かったのだ。
世界の要人達は悩んだ。悩んで、悩み続けた。どうすれば力の暴走を抑えることが出来るのか……?
とある時、一人の人間が現れた。人間は暴走を抑え、自我を保ち続けていた。
その人間は、要人にこう唱えた。「我々は愚かだった。暴走を止めるには、もう他に頼るしか無い」と。
「他の物」とは。それが、今で言う「武器」だった。
強大に膨れ上がった力を武器に流し、人間の暴走を止める事が出来たのだ。
更に、人間の力を持ったその武器は、今までに無いほどの力を発し、別に力を強くした。
自分を二つに割っている様なものだった。
人々は歓喜に満ちた。やった、これで安心して生活が出来る!
武器は世界各地に広まり、今では武器を持たない者など、滅多に見る事が出来なくなった。
要人達は安堵した。これで、暴走事故なんて起きない。もう見ることが無いのだ。
後に、人々はこれを「魔道」と呼ぶようになった。詳細は不明で、「魔道」の定義もあやふやだ。
世界を発展させたモノとして、神々が与えられた素晴らしき力として、今まで存在してきたのだった。
これが、私の知る“昔話”だ。未知の力、『魔道能力』にまつわる逸話とされている。これはその名の通り昔から伝えられているが、時が流れる度に少しずつ変わっているのだ。人間の歴史など、誰か一人の出任せで簡単に作り変えられるのだ。
だが、“最初”の逸話も違う。誰の手も加えられていない、“本当”の最初の話でも。私はこれを誰かが意図的に作り変えたのだと推測している。その誰かは、何か自分に困ることでもあったのだろう。本当の歴史に。
私は弟子に“最初”の話を教えた。勿論、これが本当の話では無いことも教えている。弟子は驚いた。小さい頃から慣れ親しんできた昔話が違ったのだから当たり前だが。しかし、弟子はもう一つ、“最初の歴史”の方が興味を持ったらしい。私は、丁度良い機会だと思い、それを探している。私も気になるからだ。それで自分の存在意義が見つかるのなら……と。
弟子はきっと、私が何の当てもなく、ただ旅している、とでも思っているのだろう。それで良い。その考えが間違っていても、何の支障もきたさない。弟子が強くなれば良いと考えているからだ。これは私の想像に過ぎないが、何故か危険がある気がする。唯一の弟子を無くしたくない。そういう思いで、フラフラとしているだけなのだ。
☆
この世界は、季節に限らず陽が落ちるのが早い。気がついたら夜、ということも有り得るかもしれない。空がオレンジ色に染まり終える頃、そこに女が一人、空を見上げ立っていた。
広くも狭くも無い微妙な空き地に、女は身動きもせずに、ただ流れていく白い雲を見つめていた。
「——お師匠様!」
軽快な足音と共に向こうの道から走ってくるその少女は、手に剣を持っていた。真っ白で装飾も無い剣はとても小さく、少女の両手で包み込める程の物だった。女の前に着くと、息を切らしながら剣を差し出した。
一方の女は瞬きをし、少女に答えた。
「お待たせしました。言いつけの通り、白い小さな剣です」
「……荷物の袋はちゃんと縛ってきたな?」
少女、カーナは差し出した手をそのままに、女、お師匠様こと茜にはい、と返事をする。
「勿論。——正直言って、そこまで大きくない袋に、あんなたくさん荷物が入ってるとは思いませんでした」
片付けに苦労しましたよ、と付け加えると、再び手を茜に向けた。オレンジの光に照らされて、白の鞘が鈍く光っている。茜はそれを片手で受け取ると、鞘を外す。銀色の刃が姿を現した。刃を顔に近づけると、茜の真っ赤な瞳が映る。爪で軽く叩くと、コンコンといい音がした。
「正解だ、カーナ。よく見つけたな」
「物凄く疑問だったのが、どうして同じものが五つも入っていたのかって事です。実は、店主さんに手伝って貰ったんですよね」
カーナは頭を掻く。茜は目を丸くした。——あいつが、か。もう“これ”には一生関わらないと思っていたのに。
「それで、私が探してたら、店主さんが声を掛けてくれて。剣を探してるって言ったら、物凄く驚いてて。それで、自分も見たいって、」
「茜さん!」
カーナの再現を遮るその声は、今さっき話題だったその店主だった。茜とカーナは同じタイミングで振り向くと、茜達の荷物を持って歩いてくる店主の姿が目に入った。
「きや……あ、」
「……きや?」
「……茜さん」
最初に口を開いたのは茜だったが、すぐに自分の手で口を塞ぐ。カーナは聞きなれない言葉に首を傾げ、店主は前で止まり、驚きを隠せない表情で茜を見つめる。
「茜さん、今、なんて……」
「あー、久しぶりに気抜いたら、つい。やっちまった」
「はあ?」
茜は俯き、首を振った。店主は荷物を地面に置くと、一瞬だけ目を閉じ、微笑んだ。
——丁度お弟子さんも居るし。いい加減言っても良いよね。
「何年ぶりかな、君が俺の名前をちゃんと呼んでくれたのは。ねえ? 咲乃」
突然変わった態度に、カーナは驚くことしか出来ない。茜は何故か諦め顔だった。
店主は目線をカーナへと向けると、また微笑み、肩に手を置いた。
「驚いてるでしょ、カーナちゃん」
「え、いや、だって……」
「咲乃は昔の事を話したがらないからね。いい機会だし、教えてあげる。
俺と咲乃は、戦いのパートナーだったんだよ」
茜はため息をついた。