二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 魔道の世界--旅人達は--  *稲妻小説* ( No.3 )
日時: 2011/10/16 18:15
名前: 紅闇 ◆88grV3aVhM (ID: dNKdEnEb)
参照: お菓子の袋開けたら中身が飛び散りました。ポップコーンェ……




序章. 【 ジェネードの町 】

 1話










 時は、空が赤くなり始めた頃。
とある町の一角に構える店。そこに、小さな光が灯った。

「……カーナ。おい、起きろ」

 布団に包まってすやすやと寝息を立てていた少女を揺さぶり起こす一つの影。
目を擦りながら起き上がる少女を見て、影は言った。

「ほら、早く。今日は出発するんだぞ」

「……え。もう、ですか」

 影は、少女がちゃんと起きたのを確認すると、後方にあった木製の扉に手を掛けて、手を軽く振った。

「もう店主も起きてるから——、私は下に居る、お前も早く来いよ」

「お師匠様、待って下さい。行き成り過ぎて、状況、が」


 “お師匠様”と呼ばれた影は少女の問いには答えず、そのまま行ってしまった。
いや、少女の声が小さすぎて、聞こえなかったのかもしれないが。




 一人取り残された少女は、策付き窓から覗く赤い空を見ながら、ゆっくりと立ち上がった。



    ☆



 この世界に存在する、不思議な現象、“魔道能力”。それは、何とも説明し難いもので、不可解だ。太古の歴史から今まで、人はこの力を頼りに何千年もの間、地を支配してきた。
何故この不思議な現象を、人は使える様になったのか。魔道能力を生み出した悪魔から知識を学んだとか、天から見守る神々から授けられたものだとか諸説あり、真実は見当たらない。
 広大な土地、インフェニアは魔道能力が使える人間だけが住む土地。いつの間にか力を持つ者と持たない者が分かれてしまい、既に当たり前の様に存在する能力なのだ。

 この現象は“素”から来ているとされ、人はこの“素”を操っている。人の持つ能力は自然のものであったり、人工的なものであったりと様々だが、全てこの“素”から生み出しているのには変わらない。
 平和、戦争、平和、戦争……、人は過ちを繰り返しながら、今の文明に辿り着いた。使い勝手によっては暴発する能力をいかに安全に使用できるか……、結論となったのが“武器を持つ”事。それによって比較的安全に能力をコントロールする事が出来た。

 いくら文明が発達しようと、“魔道能力”の謎は解き明かされないと感じる人も多い。しかし、大半の者が、それを深く考えようとせず、楽観視してごく普通に能力を使っている。それ程この力は身近に在り過ぎたのだった。



    ☆



 緑の髪を持つ少女、“カーナ=グリドール”は、麻で出来た軽い旅装束に着替えると、扉を開けてこぢんまりとした部屋を出た。
 狭い通路から繋がっていた階段を下りると、先ほどと同じ影——“お師匠様”がカーナの姿を見て、目を細めた。

「遅い。何していた」

「お師匠様が行き成り叩き起こすからです。まだ日も昇りきっていないのに……」

 カーナがお師匠様と呼ぶ人物は、カーナ自身とそれほど年が変わらなく見える。しかし、口調や、その性格の違いからか、少なくとも姉妹とも見えなくは無い。
 悪魔のように真っ赤な瞳を持つこの女は、左手に彼女の背丈と同じぐらいの槍を持っていた。この世界では槍系統の武器は多くなく、広まっていない。また彼女も広まらぬ武器を大切に扱う、言わば変わり者の人間だ。

 叩き起こされた不満を顔に露わにしつつ、カーナは冷静に「本当に行くんですか?」と聞いた。それに対して女は当たり前とでも言いたげな表情で普通に答えた。勿論、と。
 反論しようと、カーナが口を開いた瞬間、別の人影が現れ、カーナの両肩に手を置いた。

「わっ……!」

肩に置かれた手と、気がつかない内に背後に居た驚きで、女に詰め寄ろうとしたが直立姿勢になったカーナ。
 それを見て、女は笑う。

「自分の背後に近づく気配も読めないとは。お前もまだまだだな」

 それを聞いて目を丸くしたカーナは、恐る恐る目線を後ろに向けた。
——手を置いたのは赤髪の男。病人の様な真っ白な肌を持っていたが、その明るい笑顔で恐ろしさは感じられない。
知人の顔を見て、カーナは更に目を丸くした。



「店主さん!」