二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 魔道の世界--旅人達は--*稲妻* オリキャラ募集開始 ( No.36 )
日時: 2011/12/03 22:45
名前: 紅闇 ◆88grV3aVhM (ID: dNKdEnEb)





一章.【 桜と森、神達の住まう場所 】




1話






「いつまで歩くんですかー」

「二年」

「……冗談は止めて下さい」


 長旅を楽しませてやったじゃないか。そう言う茜の足取りは軽い。いきなり、走れとでも言われても難なくこなしそうだ。
反対にカーナは足は重く、やっとの事で茜に付いて行けるような状態だった。
 二人の目線の先は、草、草、草。見渡すだけで疲れる程広い草原地帯。葉は黄緑色に染まり、風も穏やか。ピクニックに来たら楽しいだろう。勿論、この二人にそんな考えは浮かびすらしないが。


「どうでも良いんですけどね」

「なんだ?」

「どうしてそんなに楽しそうなんですか?」


 茜の表情の変化は少ない。いつも、と言う訳でも無いが、笑ったり、泣いたり、怒ったり。喜怒哀楽が顔に出て来ないのだ。
しかし、隣を歩くカーナは、その茜の些細な変化でどんなことを考えているかなんとなく分かっている。まるで、親に叱られる子供のように、虫の居所が悪ければ上手くかわし、機嫌が良ければ物をねだってみる。既にそういうことが出来ている。


「どうしてって、言われてもな。古い友人に会いに行くんだから楽しくなるさ」

「いつも思いますけど、お師匠様って顔が広いですよね。どうしてですか? もしかして、友人の友人も友人とか思ってませんよね?」

「……理解し難いな。長く生きてるんだから、必然的に顔見知りも増える。簡単なことだろう」

「長く、ですか。私とそんなに変わらないような気がするんだけどなぁ」

「勝手に悩んでおけ。森が見えてきた」

「って、目の前じゃないですか! 見えてきたどころじゃ無いです!」

「話していたから短く感じたんだろ」


 何も考えて居なさそうでも実は合っている。そんな性格が、なんとなく羨ましいと感じた。
 茜は槍で、森の入り口にぽつんと立っている、一つの粗末な看板を叩いた。カーナはしゃがんで目線を看板と合わせると、砂などの汚れを手で取り払った。薄汚い看板はここ暫く汚れにまみれていたようで、いくら擦っても、とれない部分が多かった。
うっすらとそこに書かれている文字を指で追いながら読んだ。


「『……年……の森』。何ですかこれ、一番重要な部分が消えかけて読めませんけど?」

「おいおい、旅人が迷わないようにって設置してたのにな。何やってんだか、番の奴らは」

「番? 何か、係みたいなのがあるんですか?」

「二人だけだ。係と言うか、そんな大それたものじゃないが」

「はあ。で、この看板どうします? 書き足しますか?」

「これは元々あいつらの仕事だ。放っといて、言っとけばいいさ」

「そうですね。私達書けるもの持ってませんし」


 師匠と弟子。この関係はどこか似せるものがあるのだろうか。この二人の場合は自分に関係の無いことには触れないらしい。もっと言うと、ただの面倒臭がり。
 二人は、横に広がって見える巨大な森を見上げると、肩を並べて入り口に入っていった。

 森の奥から、うっすらと桃色の何かが風に舞って来たのを見届けながら。