二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 魔道の世界--旅人達は--*稲妻*  ( No.50 )
日時: 2011/12/18 19:11
名前: 紅闇 ◆88grV3aVhM (ID: dNKdEnEb)






4話-2





 円堂の言うとおり、茜ともう一人の男は反応が薄い。三日振りに会ったとでも言うような様子だ。そんな二人に、円堂は不服そうに目を細める。


「どうしてって言われてもな……茜が伝えてきたんだよ、近々そっちに行くって」

「私は“二人”に通達したはずだが。どっかで捕まって届かなかったか」

「何だって……俺知りもしない……」



「あ——うん。そうだね、あいつがもう一人の番で、『風丸一朗太』って奴」

「随分とかっこいい方ですね」

「え?」

「いえ、何でもないです。では、三人だと」

「そう。意外に楽しいよー」


 一方では、三人が笑いながら話をしていた。内一人はまだ不満そうな顔をしていたが。
 三人の昔話から桜の木まで、楽しく会話に花を咲かせる三人は、見ていて羨ましいものだとカーナは思った。


「でも懐かしいなあ! 何年ぶりだっけか?」

「二十年前」

「その頃はまだ生まれても無かった気がするが? 俺達二人はその頃の世界を知らないしな」

「勿論、私だけだが。あの時は楽しかった」

「何その実際に見てました反応。まあ、あながち間違いでもないけどさ」


 三人の会話には矛盾が生じている。誰もそのことについて言わない辺りについては、さすが茜の友人。近寄る人間は自分と似ているという迷信があるが、全てが嘘と言うわけでもないのだろうか。
実際、誰も嘘などは口にしていないが、それに気付けるのは他に誰も居ない。


「桜の木はどうだ? 今年も順調に花を咲かせられそうか?」

「ああ。ちょっと開花が早い気がしないでもないけどな。まあ、桜も満開に越したことはないさ」

「桜、桜って。一応あれにも『五年桜』っていう名称あるんだけど?」

「その名称が付く桜は世界に一つだけしかない。この辺で桜と言えば、指すものは一つしかない」


 茜の表情に翳りが見えた。何を思ってそんな顔をするのだろうか。
 

「あ、そうだ。天月ー」

「はーい? カーナちゃんに桜を案内して差し上げろと?」

「言いたいことが分かるって良いよな、羨ましいぜ」

「円堂、話が逸れてる。そうだ、悪いけど宜しく」

「構わないけどね。お弟子さんに聞かせたくない話とあれば、適当に時間つくってきてあげる」

「はい? 何のことですか」


 天月はカーナを振り返り、満面の笑みで言った。


「あたし達邪魔者だってさ、カーナちゃん。桜でも見に行く予定が出来そうかな」


 カーナは茜を見た。茜は困ったように顔をしかめると、手を振り払って行って来いの仕草をした。
 元々興味があった五年桜の森とその桜。出歩くなと言われる覚悟はあったので、驚きと嬉しさが混じったような気がして、良く分からなくなった。取り合えず、外に出るチャンスは逃したくないと思い、カーナは天月の好意に甘えることにした。


「じゃあ……行って来ますね、お師匠様。失礼します」


 カーナは立ち上がって儀式だけの礼ををし、天月と一緒に外に出た。外の天気は変わらず晴天。






「——恨むなよ、天月」




「はて、何のこと? まあ、話は後で聞かせて貰いますけどね」