二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 魔道の世界--旅人達は--*稲妻* ( No.51 )
- 日時: 2011/12/23 15:20
- 名前: 紅闇 ◆88grV3aVhM (ID: dNKdEnEb)
5話-1
「——さて」
小屋を出て歩いていくカーナと天月の姿を見届けると、風丸は扉を閉めた。振り返るその顔は、ここに戻ってきた時と同じように深刻だった。
先程まで談笑していた雰囲気は既に無い。三人は共に顔を見合わせ、細々と話し始めた。
「良いのか? カーナはともかく、天月ぐらいには話してやっても良かったんだが」
「カーナを一人で出す訳にはいかないだろ! 最近どうも辺りが怪しい。誰かが監視しているような」
「——二人で居れば何とかなると。まあ、そこは納得しよう。円堂、上手い具合に話を振ってくれて助かった。正直言って、追い出す口実が見当たらなくてな」
「聞かせたくない話なら、小屋にさえ入れないと思ったからなー。そもそも此処に来ること事態が可笑しい」
茜は自分の口下手を久しぶりに呪った。——あいつ、勘が良すぎるからな。今頃疑い始めてるかも知れん。
暫くの間交流と取っていなかったとしても。自分の考えを見抜ける友人は頼もしいと感じた。また同じように、恐ろしくも感じるようになった。
だが、そんなことはどうでもいい。今自分が知りたいと思ったことだけを聞けばいい。
「じゃあ話すが……天月以外、他言禁止だ。まだ推測の域を出ていない」
「そもそも、私達が此処に来た理由は、あれだ、<災厄の言霊>をやったんだ。ジェネードでな」
「ヒロトの所……そっちも久しいな。あいつはどうだった?」
「相も変わらず病人のような青白い顔をしていた。で、話を戻すが……。『創造の神』によれば、災厄の発祥が此処だった」
「……まさか。此処は五年桜があるんだぞ? 見守る神様も居る」
「だから訳が分からなくなってるんじゃないか。
——ここでお前達に問う。最近どんな様子だ? 桜じゃない、“この地を見守る神様方の方だ”」
茜は語尾を強めた。他人が見たら脅しのように見えるだろう。一方の二人は怯えるようすもなく、考える素振りを見せた。変に肝が据わっているところも、らしいと言えば、らしい。
んー、と迷った挙句、円堂が口を開いた。
「確証を得ないけど……そう言われると、少し弱まってる節はあるかもな」
「というか、俺は薄々可笑しいと感じていたが。さっき言った看板、あれも文字が消える=何かが可笑しいって意味なんだよ」
「え、そうなのか?」
「俺がこの前少し細工させて貰った。悪い……とは思ってない」
「そうか……。それは神の力そのものが弱まっているのか。誰かの力が加えられているからなのか。——お前ら、変なことした?」
「「しない。する訳ない」」
二人揃ってキッパリ言い切った。お前らが何かやってくれていれば楽なのになと、茜は頬杖をついた。無駄に動きたくない自分は、これ以上他の土地に行くことを望んでいない。
話が途切れ、皆が黙り込む。だがそれも一瞬の内で、風丸によってまた会話が戻る。
「さっきから神様やら言ってるけどさ……お前、信じてるのか? 何と言うか……信仰って奴」
この世界に、『神』の存在は強く信じられている。魔道のことや、平和のことや……色んな場所に神が宿っているとされる。
勿論、くだらない噂だと言う者もおり、双方亀裂が走っている部分もある。
此処、五年桜の森にも神がこの地を見守っているということで、番の者も“外面では”神を信仰している。
「<創造の神>の知識を借りてるんだから、勿論……と周りに言っているな」
「……信仰は無いのか」
「お前らと一緒だよ。信じたいが、余りにも話が出来過ぎていて疑っているってな。同じだろ?」
「俺は……昔の人から見て、神レベルの魔道の使い手が居たと思ってるな。人間で」
「それが一番現実的だ。多分それで合ってると思うが、そんなのを爺婆に言ったらお叱りを受けるからな」
かなり無礼なことを言った気もするが、茜は無視し、扉の方へ向かった。横に立てかけて置いた短槍を手に持ち。
「どこへ行くんだ?」
「話も終わった。カーナを呼び戻すさ」
「俺も行こうか? 桜までは道を外れているから、結構迷うぞ」
「必要——……あるな。有り難い」
「よし。円堂は、」
「留守番は遠慮するぞ、俺だって一人は暇なんだよ。それに……もうじき暗くなるし、人数は多いほうが良いんだろ?」
風丸の言葉を遮って、円堂は部屋の奥のほうに向かった。ゴソゴソと何かを探す音がすると、カンテラを持って戻ってきた。
「……何か……古いな」
「五月蝿い。村はこれ位しか支給してくれないんだよ」
「結局、この森の存在意義も薄れ掛けてるって所だな。なーにが神様信仰だ!」
「はいはい。んで、暗いと何かいけないことがあるのか?」