二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 魔道の世界--旅人達は--*稲妻*  ( No.76 )
日時: 2012/01/10 14:04
名前: 紅闇 ◆88grV3aVhM (ID: dNKdEnEb)




9話




「愚痴言って良いか?」
「駄目」
「何であの光の道が消えたんだよ。あれは円堂の得意中の得意じゃ無かったのか。私は眠い」
「無視かよ。得意だけど得意中の得意じゃあない。一生寝てろ」
「あー怖い怖い」

 周りの相手など気にも留めずに円堂と茜は口喧嘩をする。その横で、風丸が頭を掻きながら溜め息をつく。その間にも少しずつ追い詰められ、相手との間が狭くなっていく。
 いつまで経っても終わらない言い争いに、ついに引きつった笑みを見せて風丸は言った。

「……喧嘩はやるべきことが終わってからにしようか」
「笑顔が黒いなぁ」
「眠い眠い。<黒現象・黒石>」

 真っ黒な手の平サイズの石がヒトの周りを縦横無尽に飛び回り、当て続ける。
 それを見ると円堂も正面を向き、両手を突き出す。風丸は目の前の相手に突進し、怯んだ隙をついて胸の前に手をかざした。

「<黄現象・散雷砲>」
「<風芯心>」

 円堂の手の中に光が収束する。それは神々しい程の光を帯びた光線となり、発射された。その一瞬だけ辺りは眩しく照らされた。再び闇が戻ってくると、そこに居た筈のヒトは跡形も無く消し去られていた。
 ヒトの胸の前で微かに空間が“歪む”。ヒトは胸を押さえて苦しみだし始めた。膝を折って地に頭が付くと、そのまま動かなくなった。

「久しぶりにお前らの技を見たが……相変わらずその“砲”の威力は最高だな。それにしても風丸、今のは何だ? 初めて見るが」
「見えない所で恐ろしいことをやった。……聞くか?」
「——想像だけで十分だ」
「どうでも良いけどさ、何か面倒なんだけど。茜ッ、いつものアレどうぞ」

 そう言うと円堂は後ろに下がり、茜の背中を押した。気だるそうにする茜の顔を見るや否や、肩に手を置いて一言。

「カーナが心配じゃないのか?」
 顔に憎たらしい笑みを浮かべるのを見て、茜も満面の笑顔で言い返した。
「弟子を引き合いに出すな。お前も前に出ろ、奴らと一緒にぶった切ってくれる」
「丁重にお断りするかもしれないな」



 風丸が横目で「馬鹿」の二文字を顔に出しているのをしっかりと見た茜は、仕方なく槍を持つ。



「我らのキャプテンがお望みのようだ、悪いね。<緑現象・風斬零閃>……!」





 たいした動きもなく、茜は腕だけを使って槍を横になぎ払う——!










   *












「……木々が弱っている。誰かに知らせないと」



 木を撫でるその女は、そう呟くと道なき道を歩き始める。