二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ________冬結晶. *小説集*_______ ( No.89 )
- 日時: 2012/01/27 19:33
- 名前: 紅闇 ◆88grV3aVhM (ID: dNKdEnEb)
11話
「……眠い」
既に日付は次の日に変わっていた。黙りこくっていた木々は再び風に揺られ、太陽の光がさんさんと降り注ぎながら。
カーナは小屋のすぐ近くの木に寄り掛かって座り半分意識を飛ばしていた。小屋の中からは茜と森番達の口論が聞こえる。
——これだから、年下って嫌なんだよなぁと、素直な感想を心の中で述べていた。何か大事な話をする必要があるらしく追い出された。慣れていると言えば慣れているのだが。でも放置ってヒドイ。
「——そして暇」
除け者にする茜に多少苛立ちつつ、どうせ暇なんだからその辺を歩いてみよう、という自己完結で終わった。勿論行く先は五年桜。今度はあんな失態はしない。
一応外から声を上げて聞いた。しばらくして「勝手にしろ」というくぐもった声が聞こえて安心する。実際これが駄目だったら無理やりにでも中に押し入るつもりではあった。
ただし暗くなる前に帰る事、と茜の注意を軽く受け流す。用心の為に短剣は持っていくが、敵が一箇所に留まるとも到底思えないので、かなり楽観視して出発した。
*
五年桜は悠々とその場に居て、花びらを舞わせていた。カーナは木の幹に触れて額を押し付け、目を閉じてゆっくりと自分の考えを纏め上げる。
(女が言っていた何とかの石……あれが何かの鍵なのかな。名前は忘れたけど)
「見つけた」
「……あ、オラリスさん」
二人は昨日の夜の内に何度か顔を合わせている。オラリスは桜の背後から現れ、カーナの肩に手を置く。
「そんな深刻な顔をしてどうしたの」
「んー、除け者は一人で考えろって事ですかね」
「……昨日の事? 私は知ってる。教えてあげようか、色々調べちゃったの」
カーナはハッとして振り返る。紅色の髪を風になびかせながら、オラリスは優しく微笑んでいたのだった。
*
「貴方が言っている石っていうのは、多分六つの掟を宿したなんちゃらかんちゃら、ね」
「六つ? 確か『賛美』も六つありましたよね。それですか?」
「可能性は。その石を奪った女ってのは、何て言ってた?」
薄れ掛けていた記憶を必死に繋ぎ止める。ゆっくりと口に出して見ると、その時の世界が鮮明に浮かび上がった。
「そうだ……えっと、……『希望』」
「希望。ビンゴね、勝利の賛美内にあるわ。……無色、光現象」
「光……ですか」
残念ながらカーナは光現象の魔道を持っていない。手が届かぬ魔道に思いを馳せると、溜めていた息を吐き出した。
「石は、六つですか」
「いいえ。不確かだけど、三つよ。壊れたか失くしたかしたんでしょうね」
「……どこぞの誰かは存じませんが、その“奴ら”は次の石を狙うと思いますか?」
「そうね、意図は知らないけれど、……私は思うわ」
カーナは手を握り締めた。何となく、今何が起きているのか掴めて来たのだ。
一方オラリスは上を見上げ、桜と微かに見える青い空を見て、こう言った。
「さて……、カーナちゃんはそろそろ戻った方が良いんじゃないかな」