二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ________冬結晶. *小説集*_______ ( No.91 )
- 日時: 2012/01/28 15:46
- 名前: 紅闇 ◆88grV3aVhM (ID: dNKdEnEb)
12話
「森を出るぞ」
「わー凄い単刀直入にいきなり言われちゃったー」
カーナが小屋の前に戻ってきてから、茜は一息つく間もなくそう言った。カーナが姿を見せる前から茜はそこに待ち構えており、何故か怒っている様子だった。
茜は足元に置いてあった荷物を半ば投げつける様な力強さでカーナに渡した。相変わらずの不機嫌だなと心の中で苦笑いしながら、一応話し合いの内容を聞く。——まあ、なんとなく分かるけど。
「お師匠様、今まで何を話していたのですか?」
「……聞くか? 昨日、見知らぬ女が盗って行った石の様な物体の件だが——」
「じゃあいいです」
予想通りだったが、少し残念に思ったのは気のせいだと信じ込んだ。茜は茜で、話しても良い気でいた事にカーナが反応を示さなかったので疑問に思う反面、不気味にも感じたそうな。
「茜——!」
明るい、場合によっては少し煩いという不思議な声。今は後者の方だった。
ドアが弾け飛ぶ様な勢いで開き、円堂が飛び出る。茜が睨んで槍の穂先を円堂に向けると、慌てて足を止め、声のボリュームも下げた。
「おおっと……茜! 何だよいきなり、危ないじゃないか!」
「その言葉、そっくりそのままお返ししようか? 『何だよいきなり、煩いじゃないか!』」
「う゛……そ、そんな事はどうでも良いんだよ! ……本当にもう行くのか? ちょっと急ぎ過ぎだろ」
「私は旅人で戦闘士だぞ? 一箇所に留まるのは精神が持たないんだよ」
見慣れた喧嘩腰の言い合い。カーナが冷めた目で見ていると、後から歩いて、天月が鎌を携えて出てきた。
天月も目線を巡らして二人に止まると、微笑を浮かべて溜め息をついた。仲が良いのね、と呟くと、言い合いの二人を通り越してカーナの側まで行った。
「中でこれから何をするか決まったらしいの。風丸もすぐに帰ってくるよ、驚いてる? カーナちゃん」
「まあ、違うと言えば嘘になりますが」
——第一、此処に居たのは二日じゃないか!
——馬鹿か、一週間はずっと居ただろう!
「別に関係ないけど。貴方のお師匠さんはたまに理解不明な事を言うね?」
「森に来る変な人ですから。仕方ないんですよ、私もよく解りません」
*
「ああ、カーナも帰ってきてたのか」
風丸は沢山の手紙類を抱えて戻ってきた。どこか興奮した面持ちで四人の前に来ると、親指を突き立てて笑った。
「当たりだ、茜。——近々、浮遊島がこの辺りに来るらしい」
「決まったな」
「これ以上話せなくて残念だ、旧友かも分からない友人」
「ちぇー、お前は何も言わないのかよ、分かった分かった!」
「また機会が会ったら来てね! 桜はしばらく見れないけれど」
「ありがとうございました。さ、お師匠様、行きましょう」
**
桜はもうすぐ散り、五年の月日を経てまた咲くだろう。
人が上を見上げ。次は、様々な物が発達している島を指す事になる。
「良いよ? あたしは何も言わないからさ、」
* * * - 一章完結 -