二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: ________冬結晶. *小説集*_______ ( No.95 )
日時: 2012/02/14 21:42
名前: 紅闇 ◆88grV3aVhM (ID: dNKdEnEb)
参照: 書き方統一する為、色々違いますが許せ。






二章【 霞む地上、戦乱の最中で 】












「やあ、お久しぶりだね。……用件? ああ、ちょっと忠告しておきたい事があるんだけど」
『今ぁ? んー……少しばかり忙しいから後でにしてね、は無理?』
「出来れば無理って言いたいけど。まあ緊急事態、周りが大変です、なら構わない」
『ったく、こっちは一般人とは違ってのんびりしてないんだけどな! で、何さ。あいつの件だったら大丈夫だよ』
「……そうか、流石に雲の上の人間は話が早くて良い。なら、裏の話も平気かな?」
『災厄だっけ? 破滅だか壊滅だか知らんけど、あたし達には関係ないから』
「素直じゃないね。なら良いや、邪魔して悪かった。二人と仲良くしてやってよ」
『勿論! 何年振りかの再会、待ちきれないぐらいさ!』






 ——会話は、ここで途切れる。














     *













「へぇ、闘争大会ですか」



 森の獣道を歩く二つの人影。 彼女ら——茜とカーナだ。
安定しない細い道をものともせず、普段と変わらない速さで歩いている。それは流石としか言えないだろう。

 目の前の藪を掻き分けたり蹴ったり切ったりしながら、茜は話を続ける。


「ああ。私らがゲームで行う『闘争』をトーナメント式に進めるそうだ。大体、地上の人間と“上の奴ら”とで戦うらしい」
「開催場所が浮遊島、と。この前言っていた五十年……いえ、それ以上下に下りていない、幸せで楽園の様な島ですね」
「その存在全てがデマに見えてしまう、恐ろしく幻の様な島だな」

「そんなに浮遊島が嫌いですか。友人さんがいらっしゃるんですかね、分かりやすい」
「…………」


 図星だったのだろうか、茜は口を閉ざす。その様子を見て、カーナは内心ほくそ笑むのだった。






 前に進み続けるが、道を阻む草を乱暴に踏み締めた辺りで、急に減速する。茜は口を歪め、深く息を吐いた。
獣道は、幅が一人ギリギリ通れるぐらいしかない。後ろから付いていたカーナは、立ち止まった茜の背中の奥の方を見る。


「どうしたんですか? ……って、あらら」
「もうこんなに伸びていたか。草木の成長は早いのだな」
「それより左側を見て下さいよ、凄いです」


 これまでの獣道とは大きく違っていた。茶色の土で出来ていた道が緑で見えなくなっていたのだ。
歩きの邪魔をする程度だった草や藪はお互いに絡みつき、障害物と言うよりは道そのものに。
また、森に囲まれていた視界は急に開けた。日光が完全に届くようになったは良いが、道の左側は足元さえ無い状態。つまり、崖と言うのが正しいか。

 崖の下を見て呆然としていたカーナは、頭を振って我に返る。


「これは……えっと、つまりどういう事ですか?」
「真っ直ぐに来ていると思ったが……、獣道を歩いている時に凹、つまり谷の形をしていたという事だ」

「気付かぬまま最深部を通り、今は上に上がる最中? じゃあ此処から落ちたら……」
「谷の奥深くに墜落、と。まあ、道自体は広くなっているから、壁伝いにそれば大丈夫だろう、……多分。人生崖っぷちだな」



「わ、私の人生はまだ半分も越してませんよ!? 死んでたまるもんですか!」


 



        *






 広い場所に出た途端全身の力が抜け、カーナはその場に座り込んだ。
茜はと言うと、近くなった水色の空を眺め、チラチラと地上を見たと思えばカーナを見たりと、忙しなく動いていた。


「どうしたんですか、そわそわと落ち着きの無い」
「浮遊島がどこにあるか探しているだけだ。黙ってお前も手伝え」
「浮遊してるんだから下を見ても駄目でしょう? 此処と同じ高さか、それより上を見ないと」
 

 歩き回る茜に声を掛けるが、まるで相手にせず上の空だ。時々低く唸っては立ち止まって考え込んだりの繰り返しだった。
それを見続けていただけで、何故か苛立ちを覚える。カーナも立ち上がって声を荒げた。


「お師匠様! いい加減に、」



「……見っけ。あったぞカーナ。だからそんなに叫ぶな、耳が潰れる。ただでさえ頭が痛いのに——」


 え、と目を丸くする。無理も無い、茜の指が指し示す先は、この切り立った崖の下、つまり谷底を向いていたからだ。
ブツブツと呟く茜を無視して、おそるおそる近づき下を見る。谷底は日の光が届いていなく、暗闇に包まれている。


「……えっと? お師匠様? 浮遊島はどこです?」

「…………」
「お師匠——」






 ドンッ、と音がして視界に暗闇が広がり、顔全体に強く吹き付ける風。足が支えを失い、宙に浮いた。これは——……


 (“落ちているのか?”)


 体の自由を失う直前に体を捻って後ろを見る。そこには、ついさっきまで自分が立っていた筈である崖の上と、つま先を半分空中に浮かせて立っている茜の姿。
茜の顔は、薄く、冷たく笑っている。カーナは、その唇が動いていたのをしっかりと目に焼きつけた。 





 ……——足元に注意せよ。



















「い、嫌アァァァァァァァァッッ!?」


























     *







「幻はくだらない。一度破られれば、もう二度と騙せないのだから」