二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 炎神暴君★リシタニア2-銀魂×戦国BASARA3×青エク- ( No.35 )
日時: 2012/07/12 22:47
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)

 いつの間にか、彼女の周りには幽霊しかいなくなった。
 これは、とある死神の観察日記である。
 彼女は昔からある霊視の力を使って、幽霊を空に返す仕事をしていたのだ。
 だが、彼女の夫が亡くなってから彼女は変わってしまった。返すべきであるはずの幽霊は、1点に縛られてさまよい続ける事になった。

 彼女の名前はお岩。
 旅館の女将。


第3章 幽霊は本当に出ないから安心して


 さて、これは一体どう説明するべきなのだろうか。
 翔は炎神を担いで、首を傾げた。
 今目の前に広がっている光景は、お岩のスタンドであったはずのTAGOSAKUが暴走している。暴走して、その他の幽霊まで吸収しようとしている。
 そしてついでに、銀時・神楽・新八・お妙はもちろん、武将達と燐・勝呂までもが幽霊になっていた。どうしてこうなった。

「……なぁ」

「訊くな! 何も訊くな頼むから訊いて来るな!」

 銀時が反論した。いやいや、これは突っ込まざるを得ないだろ。
 燐達の体はそこに転がっているが、どうも銀時の本体が見つからない。誰かに乗っ取られたか。

「おい、銀時。テメェの体は?」

「あん? ザビエルに取られたんだよ!」

「……」

 よし、あいつは燃やす事に決定した今決めた知るかもう幽霊になったからには俺が覇権を握るのじゃわははは、と心の中でダークな事を考えている翔なのだった。
 すぐに正気に戻り、炎神を構える。

「今すぐ幽霊どもを解放してやる! そのまま天国へと昇天させてやらぁ!」

「お前ら! すぐに私の体に避難しな!」

 なんと、木に掴まっていたお岩が、手を差し伸べたのだ。——尻から。
 いや、誰が入るかそんなところから! と翔は内心で突っ込んでおく。
 すると、TAGOSAKUがしゃべりだした。

「……オイワ。1ツニナル。ミンナデ1ツニナルンダ。ソウシタラオイワハモウサビシクナイ」

 そういう理由で暴走しているのか、と翔は思った。そして無理やりにでも魂を送る為に炎神を構えた瞬間。
 お岩が掴まっていた木が、メキメキと折れ始めた。このままではお岩もあの幽霊の軍勢に巻き込まれて命を落としてしまう。

「ババァァァ!」

 そしてまさかの銀時も、自分が掴まっていた木から手を離して吸い込まれようとするお岩へと手を伸ばす。
 翔はハッとした目で、主の名前を叫んだ。

「銀時ィィィィィィィイイイイ!!」

 吸い込まれようとした。
 だが、それは阻止された。

 あのレイという女の手によって。

 レイはお岩の体を押して、TAGOSAKUが吸収しようとしている道から外す。

「レイ!」

「女将は1人じゃないよ。……みんな、女将の心の中にいるよ」

 レイは、TAGOSAKUに吸い込まれてしまった。
 銀時達が紐のようにつながってお岩を掴んでいる。お岩は唖然とした様子で、TAGOSAKUの方を見ていた。

「そうか……私の方だったね。みんなをこの場所に縛りつけていたのは。それでもずっと、私のそばにいてくれていたんだね。ありがとう——みんな」

 お岩の涙が、風に乗ってTAGOSAKUへと届けられる。
 その時だ。
 涙がTAGOSAKUに触れたん瞬間、温かな光があふれ出したのだ。

「……未練が断ち切れたか!」

 翔は炎神を握り直し、天国への門を開通させる。煌々と輝く白い門が曇天へと浮かび上がった。
 その中へ吸い込まれる際に、縛り付けられていた幽霊達は次々にこう言う。

 ——大丈夫。女将は1人じゃないよ。

「あー、数えんの面倒」

 死神の裁判を終えた翔は、炎神を背中のホルダーに収めた。

「来世では幸せに生まれて来るようにしろよ」

***** ***** *****

「ハァ。まったく散々だったぜ」

 燐は大きなため息をついて言う。確かに、彼の場合は従業員として働いていた。魔神の息子のくせに。

「で、テメェは1人でやっていくつもりなのか?」

 翔はお岩に訊いた。
 彼女はこれから1人でこの旅館を切り盛りして行かなくてはならない。なのに、お岩は笑いながら自分の胸を指した。

「私にはみんながいるよ。心にね」

「そうかい。だったら困ったらいつでも呼べや。時間外労働は金は出ないけど、やってやってもいいぜ?」

 ま、死神だしな、と翔は笑った。あとから銀時の「おーい、翔。行くぞ」という声で、翔は階段を下りて行く。

「お岩さん、1人で大丈夫なのかな?」

 しえみが心配そうに階段を下りて行く。
 翔が「心配ねぇよ」と答えた。
 実は、翔は禁術を使って1人だけ幽霊を呼び戻したのだ。彼女もまだ未練があるものだから、しょうがないと思ってのことだった。


 お岩が見たのは、1人の女性の幽霊。
 レイだった。

「あたしも、1人の男の背中を流したくてね」

 レイはそう言って、ウインクをした。