二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【銀魂】魔法の国からやって来た【夢小説】 ( No.100 )
- 日時: 2011/10/20 18:36
- 名前: アニホとミシン ◆rWjtunSpWU (ID: WPbx8B95)
* * *
——そしてさらに同時刻。
とある橋の上で、二人の男が出会っていた。
片や艶やかな黒髪を腰まで伸ばした線の細い美青年。
片や派手で毒々しい着物を着た妖しげな雰囲気の男。
そのどちらもが笠を被っていることから、顔がバレると危い人間であることがわかる。
道行く人々に聞こえない程度の声量で、彼らは話していた。
「なんで貴様がここにいる? 幕府の追跡を逃れて、京に身をひそめていると聞いたが」
長髪の男——桂小太郎は、隣でキセルを加えた男にそう疑問を投げかける。
対し、女物と思しき着流し姿の男——高杉晋助は、面白そうに答えた。
「祭があるって聞いてよォ。いてもたってもいられなくなって来ちまったよ。……それに、また会いたい女がいてな」
脳裏に思い浮かべるのは、自分が初めて心から見惚れた一人の少女の姿。
綺麗な銀色をした髪に、整いすぎたこれまた綺麗な顔立ち。
体つきも酷く華奢で、声は水晶を打ち鳴らしたように美しい。
宝石も色褪せてみえる蒼玉の瞳には暗い影が揺れており、その鬱々しさがなおのこと彼女の魅力を引き立てる。
その身に纏うは、袖や裾を真っ白なフリルで飾った漆黒のドレス。
もしも神が『この世で一番美しいモノを持って来い』と天使に命じたら、天使は一秒も迷うことなく彼女を選ぶだろう。
それほどまでに美しい少女だった。
彼女が手に入るならばその瞬間に死んでもいいと、彼女を見たことのある全ての男が思っているはずだ。
「ほう、貴様が女子に熱を入れるとは珍しいな……吉原の太夫か?」
「ククッ、金さえ積んで手に入る女なら苦労はしねェんだがな……いま話題の『真選組の姫君』さ。テメェも新聞記事に出てた写真くらいなら見たことあるだろ?」
言われて、桂は高杉の想い人がエスペランサであることに気付いた。
新聞記事の写真もなにも、彼は数日前に彼女と直接対面している。
たしかにあれほど神秘的な少女なら高杉が手に入れたくなるのも無理はないだろう。
「……意外だな、お前はもっと成熟した女子が好みだと思っていたが」
会ったことがあるとはあえて言わずに、呆れたような素振りを返す。
言ってはならない理由もないのだが、何故か言うのが憚られた。
桂の発した言葉に、高杉はその艶のある笑みをさらに深める。
「好みなんざ関係ねェ。アイツはこの世の何より美しい。そして俺が欲しいと思った。だから手に入れる……それだけだ」
「相手の意思は関係ないと?」
聞いておいて、そんなものをこいつは微塵も尊重しないだろうと、桂自身が一番よく思っていた。
壊したいと思ったものは壊す、欲しいと思ったものは手に入れる。
それが高杉晋助という男だ。
「……よもや貴様。祭に何か仕掛けた挙句、桔梗殿にまで手を出すつもりか?」
桂小太郎からの質問に高杉晋助は答えない。
ただ、肯定するように口の端を歪めた。