二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【銀魂】魔法の国からやって来た【夢小説】 ( No.23 )
- 日時: 2011/10/19 14:27
- 名前: アニホとミシン (ID: WPbx8B95)
「おいおい、マジかよ」
唇を引き攣らせながらも、銀時は腰を落として木刀を構える。
オーガがめり込んだ壁の方は大砲の直撃でも食らったように凹んでいて、普通の人間なら下半身と上半身が真っ二つになっていても可笑しくないほどの威力が、神楽の跳び蹴りにはあった。
それなのに無傷。
改めて、眼前にいるこの生物が化物だと思い知らされる。
「危ないから後ろにいて、お通ちゃん」
「お前も下がるネ新八。アイツ、新八じゃ絶対に太刀打ちできないアル」
愛するアイドルの前で格好をつけようとしたが、あえなく横槍を入れられる新八。
だが、それは彼女の言うとおりだった。
夜兎の跳び蹴りを喰らって倒れない存在に、新八の力が敵うはずもないだろう。
『ηλιμξ……、Ψερ!』
その大振りな腕を大きく広げ、神楽と銀時に直進するオーガ。
その巨体がこちらに届く前に、神楽が動いた。
「次こそは本気で行くネ!」
ダンッ! と、爆ぜるような轟音を奏でて、神楽がオーガに肉薄した。
肩甲骨ごと右腕を後ろに引いて、腰を捻り、上体を落とす。
そして力を溜めた後に放たれた右ストレートは、神楽の拳の四倍はあるオーガの拳と正面衝突し、お互いの力を拮抗させる。
「ぐっ……!」
『εθ……!』
お互いに苦しげな息を漏らし、しかし両者とも力を緩める気配はない。
力を緩めた方が負けるとばかりに、むしろ二人は込める力の量を上げ続け、ミシミシという骨の軋む音さえ聞こえてきた。
そしてそんな神楽の後方から、握った木刀を銀時がオーガに一閃させる。
『Φκαε!』
再び形容しがたい悲鳴を上げて、壁にめり込むオーガ。
……しかし、オーガはまたしても起き上がってきた。
信じられない、と。
通や万事屋メンバーの目が驚愕に染まり、神楽が悔しげに唇を噛む。
彼ら(彼女ら)は知らなかった。
オーガという化物は、倒されれば倒されるほど力を増し、復活してくる種族だという事を。
「この野郎!」
自分の跳び蹴りと銀時の一撃でも倒れなかったオーガにムカついたのか、再び驚異的なスピードでオーガに迫る神楽。
ドゴォッ! と強烈な音をたてて、神楽の爪先がオーガの腹にめり込む。
……しかし、オーガは倒れなかった。
「なっ……!」
「避けろ、神楽ぁっ!」
驚きに固まる神楽の体を銀時が突き飛ばし、銀時自身もその場所から速やかに飛び退く。
一秒遅れて、聞こえてくる破壊音。
神楽が後ろを振り返ると、そこには粉々に破壊された自動販売機があった。
あれが当たっていたら、今頃神楽の体はどうなっていた事か。
その光景を見て、ひっ、と、寺門通の喉が小さく鳴る。
新八も叫びだしたい気持ちだった。
足がガタガタで、棒切れを握る指先もプルプルと震えている。
(化物だ。本当に、化物だ……っ!)
「もしかしたら意外に弱いんじゃね?」とか思っていた数分前までの自分が恨めしい。
痛感した。
目の前にいるこの存在は、間違いなく化物だ。
人を喰らう鬼、オーガ。
本来なら自分達とは違う世界で生息している筈の、異世界の幻獣。
「新八ィッ!」
神楽の声にハッと驚いて顔を上げると、自分の真正面には片腕を振り上げたオーガ。
急いでこちらに駆け寄ってくる銀時の動きも、聞こえてくる神楽の大声も、段々と自分に迫ってくるオーガの腕も、何故だろう、全てスローモーションに感じる。
せめてお通ちゃんだけは護ろうと、その震える肩を急いで抱きしめた所で——
『ギリ間に合ったっぽいっちゃよ、エスペランサ!』
眩いショッキングピンクの影が、新八とオーガの間に割って入った。