二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 青の祓魔師 〜漆黒の記憶〜 ( No.24 )
- 日時: 2012/01/14 10:36
- 名前: 月那 ◆7/bnMvF7u2 (ID: IsQerC0t)
第2話 「お父さん」
そう、あれは過去の記憶・・・・・・
なつかしい、あの頃の—————————
「りんー、ゆきおー。」
とびっきりの笑顔で手を振りながら少女が僕と兄さんのところへ駆けて来る。
「ねぇ、いっしょにボールで遊ぼうよ!」
少女は手に持っていたボールを僕と兄さんへ差し出す。
「うん、いいよ。」
「あぁ、遊ぼうぜ!」
そう応え、僕と兄さんは少女といっしょにボールを持ち、外へ向かった。
(よかった・・・・・・。)
その光景を見て僕は思う。
そう、あの頃に比べたら、少女はとても明るくなった。
出会った——————あの頃に比べたら・・・・・
* * * * *
初めて出会ったときは まだ4月で春の花々が咲き始めたばかりの頃。
あの日、僕は一人でいつもの住宅路を歩いていた。
「・・・・・ふぇ、ふぇん、ふぇん。」
すると、電柱の影でビクビクと震えながら泣いている子がいる。
その子は僕と同じ五、六歳くらいで、長いピンクの———桜色の髪だった。
顔は伏せていてよく見えずにいたが、泣き声が聞こえたので、僕は声をかけてみた。
「・・・・・・どうしたの?」
すると、その子は僕に気がつき、顔を上げる。
顔を上げたその子を見て僕は驚く。
その子は若草のような明るい黄緑色の大きな目に、大粒の涙を溜め、とてもかわいらしい顔で僕を見た。
少女は泣きながら、二つ向こうの電柱を指さす。
その電柱の影には僕より二つ三つ年上くらいの女の子が、少女を見ていた。
しかし、その女の子の体は半透明で足が無い。その姿を見て僕は気がつく。・・・・・・霊<ゴースト>だ。
「あそこのお姉ちゃんが私を睨んでくるの・・・・。」
消えそうな声で少女は言う。
「大丈夫だよ。あの霊<ゴースト>・・・・・じゃなかった、お姉ちゃんはなんにもしないよ。」
安心させようと僕は優しく少女に言う。
「・・・・ほんと?」
少女は不安げな声で僕に聞いてくる。
「ほんとうだよ。 ほら、立って。・・・・・君、名前は?」
「・・・・・愛妙。」
「じゃあ、愛妙ちゃん。お父さんとお母さんは?」
泣きやんだその少女に僕は聞く。
「・・・・・・・・いないの・・・。」
そういった瞬間、少女はまた泣き出してしまった。
「雪男!」
名前を呼ばれて振り返ると、父さんと兄さんが走って来る。父さんは
「何やってるんだ?こんなところで。・・・ん?その子は?・・・・・もしかして愛妙か?」
「えっ!どうして知ってるの?」
僕は驚いて聞き返す。
「今日からうちで預かるんだってよ。」
腕を頭の後ろにまわして、たいくつしていた兄さんが言う。
すると、父さんがこっそりと僕に耳打ちした。
「愛妙は・・・・・ちょっと悪魔に襲われやすくてな。だからうちで預かることになったんだ。」
兄さんに聞こえないようにそうすると、
「さあ、愛妙、この二人は燐と雪男だ。仲良くしてくれよな。あぁ、それと、これからいっしょに住むんだから俺のことは『お父さん』て呼んでくれよな。」
「・・・・お父さん・・・。」
少女・・・・・・愛妙はうれしそうに、でも、照れくさそうに小さな小さな声で、
そう、つぶやいた。
〆 10月26日