二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 青の祓魔師 〜漆黒の記憶 Dark memory〜 ( No.33 )
日時: 2011/10/30 17:06
名前: 月那 ◆7/bnMvF7u2 (ID: IsQerC0t)

第3話 「忘れないで」

いつのまにか空が茜色に染まっていた。
夕暮れどきになってきたので、
「さあ、帰ろうか。」
と、父さんがいった。
僕、兄さん、愛妙、父さんの順で手をつないで修道院へ向かった。

あとから父さんに教えてもらった愛妙の過去。
愛妙は両親が病気で亡くなり、両親はどちらとも天涯孤独だったという。
悪魔に襲われやすい愛妙は里親が見つかるまでうちの修道院で預かることになったらしい。
それを聞いて僕は———————

なんだか僕と兄さんに似てるな

そう、思った。


それから愛妙といっしょに暮らし始めた が、
人見知りをしていて、なかなか笑顔を見せなかった。
けど、あることがきっかけで笑顔を見せてくれるようになり、僕と兄さんのことを呼び捨てで呼んだり、父さんのことを 素直に
「お父さん。」
と呼ぶようになった。
だから、僕と兄さんも愛妙のことを呼び捨てで呼ぶようになった。


それから 1年ほどたち、愛妙の里親が見つかり、別れを告げるときがきた。
里親はどちちらとも祓魔師《エクソシスト》でちょうど子どもを欲しがっていた。
僕たちは愛妙との別れがつらかった。
それは、愛妙も同じだった。



別れのとき、愛妙は
何度も
何度も
こう言った。

ただ一言


「忘れないで。」




それは、「さよなら」でも、「また、会おうね」でもなかった。


しかし 僕たちは愛妙のことを

十年も忘れてしまっていた。


なぜ 忘れてしまったんだろう。

なぜ——————————————


   ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「——————・・・・・きお。おい・・・・・起きろよ、雪男。・・・・・っ! 起きろっつてんだよ!このっホクロメガネ!!」
そういって燐は寝ていた雪男の額にチョップを噛ました。
「っ!!痛いよ、兄さん!!!」
雪男は起きてそう答えた。
「・・・・・・そういえば、何で兄さん早く起きてるの?」
まだ外は日が昇ったばかりの明け方だった。
「ん〜なんかさ〜、ここ最近同じ夢ばっか見るんだよなあ〜。・・・・・かわいい桜の妖精みたいな女の子の夢。」
燐は照れくさそうに答えた。
「・・・・兄さんも?」
雪男は驚いて聞き返した。
「・・・・そういうお前もか?」

「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
少しの間沈黙していた————————がその沈黙を破るようのに
「リンゴーーーン」
勢いよく 呼び鈴が鳴った。

 〆 10月29日