二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

 有神論. 1/10 ( No.3 )
日時: 2011/10/30 13:38
名前: 兎子. ◆.UAIP8bSDA (ID: Lnsp.uM2)

「——神様は存在するよ」

 にこやかな笑みを端整な顔に貼りつけた少女——否、少年こと亜風炉照美は、目の前で溜息を吐く夕闇凪にそうだろう、と問いかけた。凪は何も言わず、再度溜息を吐けばちらりと彼へ視線を送り、呆れたように口を開いた。

「あのねえ、カミサマ、なんてのは存在しないの。この世は神様無しでも生きていけるようになってるのよ。神頼みも有り得ないわ。実力で何とかなるわよ」

 子供のように神様が居る、なんて夢の欠片も無い言葉を吐き出して凪は目を細めた。照美はさらりと美しい金色の髪を白く細い指で梳き、わかってないなあとでも言うかのように肩を竦めて見せた。
 そして再び、言葉を吐き出す。

「神様は僕自身だから」

 一般的に言えばナルシストと言われそうな台詞を堂々と素面で言うのは照美ぐらいだろう。
 最も、神と言われても不思議ではない。美の女神アフロディーテを基にしたアフロディ、というあだ名や常識を覆す美しさ、そしてサッカーでの彼のプレーは人々を魅せるものがある。
 容姿的にもプレー的にも、彼は美の女神アフロディーテに相応しい。その綺麗な金色の髪は凪よりも長くのばされており、手入れがしっかりとされているのかさらりとしており、女性も羨む綺麗な髪をしているわけで。凪は髪の毛には拘らない人間なのでそれを羨むわけでも無いが。
 そんな容姿の所為で、照美はナルシストになったのかもしれない。

「神様、ねえ……」
「どうしたんだい?」
「またアフロディが何か言ってんのかよ」

 そこに呆れたような表情を浮かべて登場した二人の少年はじとりとアフロディこと照美を睨むような目で見、凪の近くへと腰を下ろした。
 此処は所謂グラウンドのベンチであり、凪と照美は隣に座ってそんな話をしていたわけである。
 二人の少年は負けず劣らず其れこそ常識を覆す髪型をしており、一方は怠そうな表情を浮かべ、一方はやや挑戦的な表情を浮かべている。

「キミたちは何時も失礼だね、ガゼルとバーン」

 ガゼルとバーン、と呼ばれた二人の少年はその名前で呼ぶなと同じことを二人同時に口にし、互いに睨みあっている。

「落ち着きなよ、涼野と南雲」

 ったく、とでも言いそうな表情の凪に制されればガゼルこと涼野、バーンこと南雲も黙るしかない。何だかんだで凪に勝てないのは誰もが同じということだ。
 夕闇凪という人物は不思議だ。弟思いの良い人、という印象は強いが慣れ親しむと彼女は明らかに可笑しいということが分かる。しかし、その可笑しさが何故か人々を魅了していくのだ。美の女神だの何だのと言われる照美も彼女の何らかの美しさに魅かれたも同然。涼野と南雲はエイリア時代に彼女の強さに魅かれた、
 最も、彼女はサッカーをやる人間ではない。其れでも何故か彼女は強いと錯覚させられてしまう。
 ——最も、彼女の眼中には弟である円堂守しか居ないのだが。

「……君たちは仲が良いね」

 羨むように呟かれた一言に照美は小さく笑った。




有神論第1話.
アフロディ時々涼野&南雲、そして円堂なカオスな連載.