二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 有神論. 2/10 ( No.4 )
- 日時: 2011/10/30 19:41
- 名前: 兎子. ◆.UAIP8bSDA (ID: Lnsp.uM2)
『ねえちゃん、さっかーやろーぜ!』
記憶に残る弟は、綺麗な笑顔をしていた。
凪は自室のベッドに寝転がりながらぼんやりと天井を見詰めた、弟に、会いたい。そんな気持ちが生まれる。でも、気持ちばかりが先行して行動には移せていない。臆病な自分に嫌気が差す。
でも、弟に嫌われるのも嫌だから。
複雑な思いを抱きながら凪は様々な思いが交差した溜息を吐いた。記憶に残る新しい弟は昔みたいに綺麗な笑顔をしていた。其れが苦しくて。ベッドのシーツをぎゅう、と握り締めていると不意に部屋のドアがノックされる。
「凪、」
優しい声で自分の名を呼ぶ照美に凪は笑んだ。
いつも私が寂しい時、決まって照美や涼野や南雲は来てくれる。其れが嬉しくて、凪はくすりと笑みを零した。どうぞ、と声を掛けるとがちゃりとドアは開かれ、予想通りの人物が顔を出した。
「——アフロディ」
「僕が目にするキミは何時も落ち込んでいるように思えるけど、気のせいかな?」
「……気のせいじゃないかもね」
ふふ、と軽く笑む照美に凪も釣られて笑み、ベッドへ起き上がっては隣へ座るように促す。
「キミは何時も彼のことを考えている気がするよ。僕や涼野たちは眼中にない」
「……私の世界は守だけだもの」
ほんの少し、悲しげに吐き出された照美の気持ちを凪は理解していないわけでは無い。分かっていて、理解しようとしないのが正しいと言える。
想われることが嫌いなわけでも無く、ただ、少しだけ心苦しかったから。自分がどんなに円堂のことを想おうと気持ちは伝わること無く、自分を想ってくれる彼等へと逃げる行為は凪という人間は好かない。
「そうだった、ね、」
そこで会話は途切れた。
沈黙だけがその場に残り、ぼんやりと壁を見詰めたままの二人の唇が動くことは無い。微かな呼吸音が聞こえる空間で、先に口を開いたのは凪だった。
「アフロディの気持ち、——理解しているつもりなんだけどなあ、」
眉を下げながら凪が放った言葉に照美はふう、と溜息を吐いた。
「キミは皆の気持ちを理解しているよ。……でも、」
「でも、?」
「……でも、キミは僕達を見てくれないんだよね」
眉を下げて笑う照美に、凪はぎゅう、と心が締め付けられた。照美はそのまま「今の、気にしないでね」と付け加えて凪の頭をぽんぽんと数回撫でて部屋から出て行った。
一人取り残されたその部屋で凪は小さく呟く。
「……アフロディに逃げることだって出来るのに、何で私、守に執着してるんだろうね」
歪んでる、なんてこと、理解しているつもりだったのに。
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有神論第2話.
アフロディ抜け駆け、凪の心がぐらぐらり.