二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 終わる世界に花束を、  〈inzm〉 ( No.53 )
日時: 2011/11/23 18:08
名前: 天音 (ID: P/D0CuiW)

(3) 日常の出来事=異常な出来事

 「……天咲、今話してたのって誰。」

あの会話後、足り無くなった食材を買い出しに結祈が店を出て行った直後。





「?……誰かって?」

店内では風丸と吹雪が顔を青くしていた。

自分を見て顔面蒼白となった二人に首を傾げる奏始の右手にはビー玉大の澄んだ緋色の玉。



<<ドッペル ストーン>>通称“石”ーーーーこの世界での必須アイテムである。

個々人それぞれが一つずつ、生まれたときから所持している“個人情報の塊”という説明が一番わかりやすいだろうか。
所持者の生年月日、出身国など基本的なことから自身の魔力や能力など情報を含んだアイテムでお互いに承諾した者となら石を通しての会話、相手の付近までの自身の転送等ができる優れもの。
なお、石の色は個々人で重なることは無く例えば奏始なら緋色、風丸は薄い緑、吹雪はくすんだ灰色といったところである。

そしてその石を通し会話をしていた奏始。
青い顔をした風丸がもしかして相手ってさ、と口角を引きつらせ言うのに対し頭上に疑問符を旋回させる彼は再度“会話の相手誰?”と問いかける吹雪に“あぁ、そういうこと。”と納得の表情を見せ口を開いた。








「<<ラティア クラリス>>。“四つの涙”の姫……だったかな。」

“最近顔見てないな”と呟く奏始の声は風丸と吹雪の驚きから来る叫びにかき消され誰の耳にも届かない。

「な、なんで天咲君そんな凄い人と知り合いなの!?」
「あの“水の悪魔姫デビルプリンセス”だろ!?」
「え……あ、え〜と……。」

喚く二人に苦笑いで“他の客の迷惑だから”と落ち着くように促すが、そんな奏始の努力なんて気に止めず逆に威勢の良くなる二人。










ーーーー刹那、もの凄い勢いの水流が三人に襲いかかった。
びしょびしょになった三人に周囲の目が痛い程突き刺さり、店の奥でずぶ濡れの床を見て頭を抱える永恋と誓許。







「あまり、その異名で私を呼ばないでくれるかしら。気に入らないのよ、その名前。」
「「!?」」
「あ……いらっしゃいませ、ラティア。」

 入り口付近で顔しかめる美少女に奏始は弱々しく声をかけた。









「また脱走したの?ティアラ。」
「うん!!だって城にいたって暇なんだもん。」
「まぁ僕もよく店番サボるし……ティアラのこと言えないけど……。」

とある住宅街を歩く二人の人物。
奏始により買い出しに使わされた結祈と“城から脱走”したという金髪の美少女、名前を“ティアラ クラリス”と言う。

隣国“フィーアトレーネ”、通称“四つの涙”を治める姫である彼女は炎を操る魔法を得意とする事から“炎の天使姫”の異名を持つ魔法使いの中でもかなり上級に分類される人物。

「……にしても、その狂った方向感覚でよくここまでこれたよね。自分の城の中でも迷うくらいなのに。」
「いや〜、だってとりあえず城でて歩いてたらいつも結祈か奏始に会えるもん!!」
「じゃあ……運任せってことかな?」
「あはは、まぁそう言うこと!!」

苦笑いを浮かべる結祈と超が付く方向音痴なティアラ。
そして、なんだかんだと話しながら店へと足を進める彼女達。
ーーーーそう、二人は知らない。

















「“反乱分子”見ーつけたぁ……!」

遠くの木陰から自身らを見て微笑む少年がいることにーーーー