二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 終わる世界に花束を、 〈inzm〉 ( No.88 )
- 日時: 2011/12/06 18:17
- 名前: 天音 (ID: P/D0CuiW)
(8) 人喰いの湖
「「「「「……っ!?」」」」」
「分かったかしら?私があなた達をこんな所に呼んだ理由が。」
美しい湖のあることで有名な“四つの涙”。
強い治癒力を持ったその水は他国からの評判も良く王族も見にくる程で、その治癒力を無いものとしてみてもかなり価値のある場所だ、と観光客は語る。
そして今ラティアが指し示すのは国一番の大きさと美しさを兼ね備えた森の中に存在する湖、“アクアリオ”。
普段はキラキラと水面を輝かせ青く波立つこの湖。しかしそこにその様な姿は欠片として無く、在ったのは水が無くなり地に開いた大穴とまるで水の変わりとでも言うかのように底に溜まっていた、
「ドッペルストーンの……欠片?」
吹雪が漠然と呟く。
赤、青、黄色を筆頭に少しずつ色味の違う欠片が入り混じり色づいた砂のようになっている。しかし彼等が驚いたことには他の理由があった。
本来“ドッペルストーン”、通称“石”はどれ程多大な衝撃を受けようと割れることは無い。
何故なら持ち主の魔力、及び生命力を微弱に含んでおりそれを用いて衝撃を無効化させるからだという。しかもそのための力は欠乏することはなく半永久的に使用可能。
だが、ただ一つ“石”が破損するときがある。それは、
「……これで一体何人死んだことに?」
自らの大元である魔力、及び生命力が消失した場合。
要するに持ち主が死んだ場合である。
そうなると“石”は砕け散り持ち主の全情報は世界から消え残るのは人の不確かな記憶のみとなるのだ。
そんな他人の遺体を見ているような状況。
驚き、黙り込んでしまった面々の中に重い空気が流れ始めたが、そんな空気を取っ払うかのようにラティアが口を開いた。
とはいえど、この状況で明るい話題などあるわけも無いのだが。
「さっき夢月夜行で“九重の月”の行方不明者や死者が増えているって話はしたわよね。」
確認するように問いかける彼女の髪が木々と共に風に揺れる。
頷く残りのメンバーはいずれもそのとき夢月夜行に居たため全員その話を理解していた。
そして皆同様、不吉な考えが頭をよぎる。
「……流石にこの量は可笑しいらただの傷害事件ではないと思ったわ、それで調べたのよ私独自の方法でこの欠片の持ち主をね。」
「ラティア、まさか……」
青い顔をした永恋に軽く頷くラティア。
的中してしまった予感に顔をしかめる他のメンバー。
「まだ半分も調べられてないけれど、ここにある欠片どうやら……
“九重の月”の行方不明者、国外死亡者のリストの人物達と一致するみたいなのよ。」