二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 終わる世界に花束を、 〈inzm〉 ( No.92 )
- 日時: 2011/12/08 18:19
- 名前: 天音 (ID: P/D0CuiW)
(9) 漆黒の魔法陣
「じゃあもしもこれが“九重の月”のトップに知られたら……。」
「えぇ、間違いなく戦争ね。あの国のトップは国民のことになると人が変わるから。」
恐る恐る問う風丸とさらりと返すラティア。
「国交が途絶えていることが唯一の救いとしか言いようがないな……」
ボソリと呟く誓許の言う通り“九重の月”数年前から国交を停止している。
そのためこちらから内部の情報を聞き出せない変わりにあちらも外部、つまり“四つの涙”でこんなことがあったのは知られないはずなのだ。
「……でもこんなの私達に見せてどうするのよラティア、力になれるようなことなんてないわよ?」
「いいのよそれで。」
永恋の言葉にそう返すラティア。
え?、と疑問の声を上げた永恋や他のメンバーを華麗に無視しつつ元湖の大穴に手をかざし先程と同じように青い魔法陣、<<時限>>経由の転送用魔法陣を展開する。
「今からこれを私の城まで転送させる。このままほうっておくよりは城に隠す方が賢明でしょうしね。あなた達は欠片がここに在ったっていう、まぁ……証人みたいなものになってほしいの。」
ラティアいわく今現在この状況を知るのは国内の重役という極めて少数の人間のみ。そして湖付近の森に異常変化が起きたという嘘の情報を国民に伝え強力な結界をはり侵入者を防ぐ工夫を施し今に至るとのこと。
仕方が無いとは言えど国民を騙すことになったためもしこのことが相手国に割れた場合の証人を国から出すことが出来ないのだ。そのために奏始や吹雪にこの状況を見せ欠片は“四つの涙”に捨てられていたという少しでも証人を増やそうとしたかったことが目的だという。
青色の光が一瞬強く瞬き消える頃には穴の底に“石”の欠片は無く、大穴のみがまるで何事もなかったかのように残っていた。
「……まぁ取りあえず城にあらかじめ張って置いた結界の中に転送したからしばらくは欠片の魔力を辿られる心配もないわ。」
穴の中を見下ろしそう言ったラティアは次に水色の陣、水属性系統の陣を開きそこから大量の水を穴に注ぎながら言う。
そして振り返った彼女に風丸が確認するように問うた。
「このことは……俺達以外には秘密にして置いたほうがいいか?」
「……そうね、そうしてちょうだい。なるべく人に知られないようにしたいから。」
ざわめく木々の音と魔法陣から流れる水の音が結界を張った湖の周辺に響く。
なかなか溜まらない水の様子を見てもう一つ陣を展開したラティアと手助けに入った水と風の掛け持ちの吹雪。
強くなった水流の音だけが響き誰一人として口を開かないまるで時間が止まったような空間の中に不意に————
「あ、やっぱり此処にあったんだ。“九重の月”の死亡者の“石”。」
「「「「「「!?」」」」」」
————遠くから声が響いた。
声の方に目をやると湖の向こう岸に黒髪、黒装束、要するに黒ずくめのいかにも怪しい女が一人。
「なんで……結界の中には私の了承が無ければ入れないはずよ!?」
向こう岸に向かい叫んだラティア。
焦りの見える彼女の顔とは裏腹に向こう岸の女は登場時から変わらぬポーカーフェイスでこう告げた。
「了承が無いと入れない?なら————
————“斬ればいい”。」
「「「「「「なっ……!?」」」」」」
上空を指でさす女、上を見上げるラティアや奏始。
驚く彼等の目の先には空中に静止する巨大な魔法陣、色は闇属性のそれよりもっと深い全てを染める漆黒。
「案外結界脆かったな。簡単に斬れた。」
その言葉と同時に魔法陣が旋回しだす。
女の手には日光を反射して輝く刀。
「!!、アイツもしかして————」
誓許が声を上げるとほぼ同時。
彼らの目前で黒い光と刀の残像が瞬いた————
—
敵ではないんだけど…
敵みたいな登場になってしまいました((