二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: そこに空があるから [inzm] ( No.209 )
日時: 2011/12/17 21:24
名前: 夜桜 (ID: KY1ouKtv)

  37話「ターナとルーナ」

「…話すよ。さっき、僕を狙ってナイフを投げたのは組織の人間だ。僕が組織の事を話そうにしたからだろう」
ターナが言う
「ねぇ。組織って何?貴方達に何があったの?」
菜乃香が聞く

「僕達の親は5年前に…僕達を捨てた」
ターナは語る、自分達の苦しみを
「私達はその時…2歳だったから、生きていく力なんて持ってなかった」
ルーナは語る、自分達の悲しみを






「ねぇ…おかあさんは?どうして、帰ってこないの?」
寂しさからの涙
「…帰ってくるよ。絶対に…」
淋しさからの涙


その時、僕達はまだ“捨てられた”という事を理解していなった
どんなに時間が経っても母さんは帰ってこなかった

私達はまだお母さんが“返ってこない”という事を知らなかった
どんなに日数が経ってもお母さんは帰ってこなかった

そして、身体も精神も限界を迎えて、朽ちるはずだった



「…こども?誰かっ!!!子供が倒れてるのっ!」
誰かの声がした

遠退いて逝く意識の中で見た声の主は、銀色の髪の女の子だった

薄れていく意識の中でその声は温かく、頭に響いた


目覚めた時、僕等は知らない場所にいた

「あ、起きたんだ」
部屋に入ってきたのは声の主、銀色の少女だった
「…こ、ここはぁ?僕達は………」
「落ち着いて、大丈夫よ。あたしは“氷裏”君たちは?」
銀色の少女---氷裏の優しげな表情は僕等を不思議と安心させた

「ターナとルーナね。分かったわ」

当時の僕等ではそこが何処なのか、何をする場所だったのかはわからなかった

ただ、私達を助けてくれた。その“真実”だけで充分だった

氷裏が言うには僕達は森で倒れていて表裏が一緒にいた大人にそれを伝え救ってくれたらしい

それに、当時僕等の他に数名子供がいた
全員私達のように親がいない子ばかりだった


氷裏が僕達を助けてくれた
氷裏が私達を救ってくれた



幸せだった

倖せだったの



“ほんとう”の事を知るまでは


4年経ったトキ

偶然、見てしまった

氷の様に冷たい表情の氷裏を


「…あたし、達の“野望”のために…」



その時知った

その時知ってしまったの


「氷裏…」
震えて、その場を動けなかった
「あ、起こしちゃたね?」
いつもと変わらない笑顔で氷裏は答える
でも氷裏の顔には…飛び散った紅い液体


「なに、してるの?ねぇ…それはなに?」

幼くても、氷裏についている紅い液のコトぐらいわかる

小さくても、氷裏が持っていたモノぐらいわかる


「…バレ、ちゃったね。ターナ、ルーナ…黙っててゴメン」
静かに告げる
「どういう、事?」
「氷裏…ねぇ?」

「これが、“ほんとう”のあたし。あたしはアンタ達が思っているような良い人じゃない」

信じたくなかった
でも、信じるしかなかった


それからだ。僕達が組織を知り、それに加担するようになったのは

それから。氷裏達のコトを知って協力するようになったのは



人を傷つける。それを分かっても加担した

人を苦しめる。それを知っても協力した


「「だって、氷裏は僕/私達を助けてくれたから」」










そして、1年経った

氷裏に…否氷裏の後ろにいる人物に言われて

今日にいたる





「これが、僕達の全てだ」
「そして、その1年で知った事もあった…私達の母親はもう、死んでいた」
ターナは告げる
ルーナは告げた

過去を語る2人の顔は痛々しいほどに悲しそうで辛そうで苦しそうで

「…分かった。もう、いいよ。ゴメンね」
舞衣香は言う
「氷裏さんのために…今まで。大切だったんだね」
菜乃香が言う


「僕達にとって、氷裏は“すべて”だった」
「私達には…氷裏しかいなかったから。氷裏だけが、私達を…見つけてくれた」



聞いた話だけも苦しく辛いモノだ

「アンタ達は…苦しかったんだね。寂しかったんだね」

「そして…誰かに止めてほしかったんじゃないの。ホントは…」


ルーナが顔を上げた
「やりたくなかった!!人を…苦しめたくなかった。私達みたいな子を増やしたくなかった!!!」
悲痛な叫び
ターナも声を上げる
「氷裏が望んだから!氷裏が…でも、ホントは…したくなかった。人を傷つけたくなかった!!!」
悲痛な思い


「「とめて、ほしかった…そして、氷裏も止めたかった…」」

2人の思い

2人の過去


舞衣香と菜乃香は思いっきりターナとルーナを抱きしめた

「「大丈夫だから。もう…好きに生きていいのよ」」

「アンタ達は、まだ“未来”があるんだから」
「貴方達は…“自由”だから。私達は…2人の味方だから」