二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: そこに空があるから [inzm] ( No.218 )
日時: 2011/12/20 18:30
名前: 夜桜 (ID: KY1ouKtv)

 39話「泣くことを忘れた少女」

差し伸べられる小さな手

向けられる暖かな笑顔


「おねぇちゃん」

無邪気な声

全てだった。親なんてイナイ
そんなあたしにとって“すべて”だった

“守る”そう…決めた

“決めていた”ハズだった


なのに…守レナカッタ


今も脳裏に響く悲痛な声

『おねぇちゃん!!!!ヤ…ダァぁあ!!!』

泣き叫ぶその声に答える事は出来なかった



「アンタの弟だったの?ゴメンねー…あたしが-----」
ヤメテ…聞きたくない


それでも、瞳は無意識にその方を見る

崩れる小さな身体を

動くことのない骸を

そして、耳は想いとは真逆にその言葉を聞き取る

「----殺した」

静かに、冷静に放たれるコトバ


あたしの目の前で…


紅く染まる小さな存在になった




もう、聞くことの出来ない

無邪気なコエ

優しく暖かな…存在を感じるコトは、もうデキナイ





泣き叫んだ

もう…涙が枯れるほどに


泣き続けた

もう…すべてを忘れるように



一生癒えないキズ

流れるコトのないナミダ



『おねぇちゃん』


あのコエを聞くことがもう無いように

あたしが泣くことももう無い







朝の陽ざしが眩しい

「もう…アレから、5年。経つんだ」


酷く悲しげで苦しげな表情で少女は呟く


「ごめんね………守れなくて」

伏せて置いてある写真立て


そこには楽しげに笑う幼い少女と少年


「…あの頃には戻れない。もう、すべてが遅いのよ」