二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: そこに空があるから [inzm] ( No.332 )
- 日時: 2012/01/16 19:56
- 名前: 夜桜 (ID: KY1ouKtv)
66話「凍りつく鈴蘭」
「------------うん。そう…あ?ん〜やってみる」
そんな事を言うとそらは手にしていた魔水晶から手を放す
「…やってみるしか、ない…か」
白の少女は座り込んだまま動かない
虚ろな瞳のまま宙に視線を送り込む
「つららちゃん…」
「吹雪君!!」
そらは吹雪に話しかける
「何?…それは」
そらの手にある分厚い本を見て言う
「え?…私の能力じゃつららの心は分からないから…古い文書に残る魔法を使ってみようと思って」
そらは言う
2人はつららを外へと、“祈りの巫女”の神殿へと連れて行く
「ふぅ…やりますか」
そらは小さく呟く
つららを中心に陣を描く
そらは本---魔道書を開く
『かなり昔の魔法であるけど…どうなるかは分からないのよ。術者のリスクなんかも、昔過ぎて』
かがりの声がそらの脳裏に蘇る
「(リスク…か。どんなモノか、つらら…貴女の心を…教えてもらうよ)」
「≪光を知る神よ 冷たく心を閉ざす者の想いを天より満ちる神聖なる灯で示せ≫」
すると天はからは暖かな光が射し、それに共鳴するように陣が光る
「だれ?」
幼い声が響く
その方向を見ると幼い少女がいた
「…つらら?」
その言葉を聞くと少女は
「そうだよ。私はツララ、此処に人が来るなんて…」
幼い少女は笑う
その空間は酷く冷たいものだった
広がるセカイは氷に包まれていた
「遊びにきたの?貴女は」
ツララは言う
「違うわ…ツララ。ねぇ、“貴女”は何処?」
そらが落ち着いた声で尋ねる
すると、ツララは目を見開き固まる
低い声で告げる
「帰って…私は此処にいるのっ!!!私は私!私は…記憶(ここ)にいるのっ!!!!」
1輪だけ咲いていた薔薇がそらの目に映る
「…野生の、薔薇」
そらが呟く
「つららは何処?」
その問いを続けるそら
ツララは
「いやっ!!いやっ!!!此処には全部ある!私の“幸せ”は記憶(ここ)にあるの!!!!」
空からは凍りつく鈴蘭の花を舞落ちる
「幸福が帰る…鈴蘭の花言葉。孤独…野生の薔薇の花言葉」
そらは呟く
『あの頃に帰りたい。みんないた、あの頃に』
澄んだ声が響いた
その方向へと走る
「…つらら」
氷の結晶の中にはつららはいた
眠るように封じ込まれていた
つららを包む結晶は範囲を増やしていく
結晶化は続く
「帰って…此処には全部あるの。私の望むモノは全てあるの」
冷たい声が聞こえる
幼いツララは涼やかな視線を向ける
『帰りたい…あの頃に。みんないた。お父さんもお母さんも…アツヤもみんないた、あの頃に』
氷の様に透き通る声が響く
その声か聞こえると共に結晶化が早まる
「つららっ!…貴女には私達がいるっ!!もう、過去の戒めを外してっ!!!」
「『帰りたい!!!』」
幼く冷たい声と氷の様に透き通る声が重なる
*
「…つらら」
そらは元の場所に戻っていた
「つららちゃんっ!!!!!」
吹雪の声が響く
そらはその方向を見ると目を見開いた
結晶がいたる処で出来ていた
「いやぁぁぁぁぁあああぁぁあぁぁぁぁぁああぁ」
苦しむような声
悲しむような声
嘆くような声
光のない瞳から涙を流し
魔力を外へと放出させ続ける
「…心の中で保っていたモノが、外れた」
そらが愕然と見る
「…沈めないと。とにかく、このままだと…つららが」
吹雪は結晶に邪魔されながらもつららに近づこうとする
「つららちゃん…」
吹雪が語りかけてもつららは反応しない
むしろ結晶化が広がる
「いやぁぁぁあ!私はっ記憶(ここ)にいるの!!!!!ずっと…みんなと---------------」
つららの声が止まる
「吹雪君」
「つららちゃん!独りじゃない。僕がいる!みんないる!!ちゃんと此処にいる!!!!」
吹雪がつららを抱きしめる
結晶に邪魔をされながら
「…し、ろう」
微かな声は憐れむような声だった
--- 怖い。恐い。コワイ。こわい。
独りが、苦しい
寂しい。みんないた頃が懐かしい
帰りたいの…あの頃に
冷たく暗い空間に、白い小さな花が凍りつく世界に微かな光が射した気がした ---