二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: そこに空があるから [inzm] ( No.426 )
日時: 2012/05/26 17:20
名前: 夜桜 (ID: KY1ouKtv)

 89話「試練」

神秘的な雰囲気のある隠し扉の向こう
“集いの巫女”の聖地である遺跡

「集いの巫女が、今回のキーとして。ここに何かある?」
そらが辺りを見渡しながら言う
「ん〜探さないとね」
ティアラが呑気そうに言う
「…リオン。ここに書いてある事、記録お願いできる?」
そらが言う
「あ、はい」
リオンがそう言い記録を始める
そらは先へと続いている暗闇へと進む

「明かりがないのに、どうしてこんなに周りが見えるのかな」
不意に呟きながら進む

先には微かに明かりが見える



遺跡の最深部であろう場所

そこには中央には台座の様に少し段差が存在し壁には何等かの絵、壁画と古代文字があるだけだった

「壁画、かぁ。かがりを連れてきた方が良かったかなぁ」
そらが言う
中心部の段差の上には自然と明かりで照らされていた
「明かり…外の光が漏れている…?」



《------------------やっと、来てくれた》


呟く様な小さな声

そらは振り返る
「え?誰も…いない。でも、今…声が」
困惑の表情で言う

すると確かに声は聞こえた



《待って、いた。貴女が…来てくれるのを》


「だ、誰なのっ?!」
そらは大声で問いかける


《私はずっと、ここで…待っていた。貴女が来てくれるのを、ずっと》


その声は優しく温かいものだった


《ずっと…“千年”待ち続けていた》


「!せん、年?」
そらはその単語からある話を思い出した

『世界を甦らせたのは千年前、それを行ったのは四季巫女』

『千年前、世界は同じ状況にいたらしいのだけど』


そらは静かに言葉を発する


「貴女が…“集いの巫女”ここは貴女の聖地」


《そう。ここは、私の大切な場所》


集いの巫女は告げる

その瞬間その空間は歪んだ


「----------え?」
そらは先ほどまでの遺跡ではない
場所は分からない。だが先ほどまでとは違う場所にいた

「此処は…」

《…貴女には、覚悟がある?》

「覚悟」



広がる空間

その場に見える笑っている大切な人々


そして、その笑顔が消える瞬間がその空間で映し出されていた



「どう、なってるの」
そらは目を見開き驚愕する

聞こえるは震えた声、悲鳴、絶叫


広がるは赤く広がる海、倒れる者



「っ!」

その中の1人がそらに向かって手を伸ばす

その表情は“助けてくれ。死にたくない”と伝えているかのようだった

だが、その手は届かない


「いやっ!いやぁぁぁぁぁぁぁあああぁぁあっ!!!!」

そらは届かない手を取るために走る
だが、どれだけ走ってもたどり着くことはできない

荒い息のまま立ち止まる

「どうして…どうしてっ!どうして…届かないの?どうして、取れないの?どうしてたどり着けないのっ?!」


《それが、運命だったとき。貴女は何をする?》


「運め、い?…----ない」

「こんな運命いらないっ!」

《抗えないものよ。運命とは理不尽なもの》

その声が紡ぎだす残酷な言葉

《貴女は、戦える?戦う、それは…今の運命を垣間見るということ》

その声は微かに戸惑っていた

《私の様に》

「え?どいう、こと?」
そらは顔を上げる

《…私は、貴女が今、向かおうとしている戦いで…千年前。大切な人を失った。貴女が今みた光景の様に》

そらは目を見開く

「そっ、か」
小さく頷く

《今ならまだ…その運命から逃げる事もできる》


「…やだよ。私は、逃げない。こんな運命、嫌っ!受け入れたくない。貴女は千年前、確かに失ったかもしれない」
そらの声は段々と大きなものへと変わる
「だけどっ!現在(いま)はまだ、分からない!!現在を決めるのはココに生きている私たち!!!」
そらは1度目を閉じる

「本当に逃げ出したい。受け入れたくない物はほおっておいて、幸せなだけを感じていたい…だけどっ」
そらは目を開ける

「未来を決めるのは私たちだから!!!誰にも決められたくないからっ!あんな未来はいらない」
強い声で言う

「私が…私が、そんな未来にならない様にする。私がみんなを守りきる」

《!》

「私は、今が幸せなの。大変なことも嫌な事も沢山あるけど、それでも…みんながいて私がいる
 この世界が大好き。だから…戦うの。それは、間違っていますか?」




《その答えを待っていたの》

その声が響くと空間は違うものへと変わっていた

そらの目の前にはそらと歳の変わらない少女がいた

優しく微笑む少女
美しい黄昏色の髪をなびかせている

《わが名はエナ・ラルト。貴女だかで言う集いの巫女》

少女は言う

《少し、貴女を試させていただきました。覚悟のない者に力を与えるワケにはいかないので》

「じゃ、じゃあ…貴女同様で他の巫女も、今の巫女にこんな事を?」
そらは声を上げる

《それは、わかりません。ですが…なんらかの方法で力量や覚悟は見ていると思われます
 私の場合は今まで、ここで貴女を待っていることしか出来なくて…なので、今回はこういう荒業を》

少女---エナは言う

「そうだっ!さっきの…あれは運命なの?」
そらは尋ねる

《いいえ。違います。あれは…私が千年前に見た光景です。この先の未来は貴女方が決めてください》

「そう、なんだ。良かった」









《貴女には聞いてほしい。私が、私たちが…千年前に犯したことを。そして、あの子の事を》