二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: そこに空があるから [inzm] ( No.439 )
日時: 2012/07/08 09:28
名前: 夜桜 (ID: KY1ouKtv)

 93話「前夜」

1人の少年は冷たい金色の瞳で
1人の少女は潤んだ金色の瞳で

1人の少女を見ていた


「あ、あの…妾に何か?」

「…アンだね。出会った頃のアンだよ」
「あぁ。記憶って、簡単に消されるんだな」
アンを見て、ルーナがターナが言う

「貴方たちは妾に会ったことがあるのですか?」

その言葉で2人は顔を歪ませる

「うん。会うどころか…私たちは“家族”なんだよ」
ルーナが笑って言う
「か、ぞく?」
「あぁ。そうだ…僕たちは、共に過ごした。普通とは違うが…僕たちは家族だ」
ターナが言う


「…かぞく?妾には誰もいなかった…なのに」
「いるよ。アンの記憶が消えても、無くなっても…アンが私たちの友達で仲間で…家族ってこと
 私たちは知ってる。覚えてる」
ルーナがポロポロと涙を落としながら言う

「「!」」
ルーナとターナを顔を見合わせた
アンの頬に一筋の雫が落ちた

「アン…?」
ターナがアンを見ると
「…っ。わからない。家族とか、妾には記憶ないから…わからない。だけど、貴方たちが言うことが本当なら
 妾はすごく幸せ…妾には、家族なんて仲間なんて友達なんて、いなかったから」

アンはひたすらに繰り返し言った

“ありがとう”と






「僕たちに、何をさせたいんだ」
ターナは言う
「一緒に行ってほしくてね」
舞衣香が言う
「!私、たちも?」
ルーナが言う
「うん。そう」
菜乃香があっさり言う

「僕たちが何をしたのか知ってるだろ?大体、僕たちは-------」
「だから?」
舞衣香がターナを言葉を聞かずに言う
「確かに、アンタたちは氷裏たちの仲間。つまり、ゼレフ側だ。だけどね」
「助けたいんでしょ?」
舞衣香が菜乃香が言う
「助けたい、救いたい。だったら、貴方たちが…止めるべきなんだよ」





「何ができるかわからない。私なんていない方がいいかもしれない。だけど、それでも…」

少女は顔を上げる
「行かないといけない。そんな気がする」





「出発前夜って以外にやることないものね」
「普通はあるんだけどねー」
少女たちは言う
「だって元々行く予定だったから、準備できてるし」





「知りたい。あたしが知らない真実を…あたしが知るべき真実を」

「あまり気負わないで」
静かに声がかかる
「ゆうり…」
「真実を受け入れる覚悟があれば、それで大丈夫よ」





「でも急すぎて実感があまりない」
剣の手入れをする少年は言う
「まぁな。だけどさ、行くことになったんだ…やるしかないだろ?」
それ聞きもう1人の少年は応える
「そうだな」








--- すべての巫女が此処に揃おうとしている
  
  はやく、もう…止めることができるのは貴女たちだけ

  あたしたちじゃ何もできない

  誰よりも近くで彼方を見ていたのに、あたしたちは何もできない

  なんて悔しいことなの?
 
  誰が本当に苦しんでいるかを知ってるのに

  誰が、何の目的で動いているかも知ってるのに

  

     何も…できない ---


銀色の髪は闇にまぎれ消えていく



「そう願っているのに…あたしは、戦うことを選んでしまう」






「なんて…愚か」




夜は明けようとしていた