二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: そこに空があるから [inzm] ( No.451 )
日時: 2012/07/23 13:18
名前: 夜桜 (ID: KY1ouKtv)

 97話「迷い」

いたい。イタイ。痛い。
頭が、割れるほどいたい…。
知らない。こんな…こんなこと、知らないっ

違う?忘れてた、だけ?

流れ込んでくる記憶のイメージ
怖い。恐い。こわい。
思い出すことが、こわい…
いたい…思い出したくない…いや、思い出さないと

だってあの子たちは…言ってくれたのだから










広がる淡い蒼の世界


その向こうに見える大きな扉


その前に立つ銀色の少女



「…氷裏」
かがりが呼ぶ
すると振り返り何も映していない様な瞳で氷裏は言う
「これ以上。進むことは許されない…あのお方の、ジャマになる」
淡々とした。冷え冷えとした。そこに感情が存在していない様で。

「…可笑しなこと言うのね」
かがりが1歩前に出て言う
「迷ってる?あたしが知った貴女なら、進ませたくないならそんな簡単に姿を見せない」
「陰から攻撃して仕留める方が確実だからね」
それに頷くようにティアラが言う
「…迷ってる、か。その通りかもね。だけど、ここは通せない」
氷裏がようやく感情が見える瞳になり告げる
それと同時に氷の牢が現れ捕まえる
かがり以外、全員がその中にいた
「ラティア。すぐ出てるだろうけど…少し待ってもらってもいい?」
かがりが静かに言う
「少しだけなら」
「危なくなったら手出すよー」
ラティア、ティアラが言う
「無理しないでよ」
そらが笑って言う
「かがりさん。怪我、しないでください」
リオンが言う
「ん〜それは保証できないな」


かがりは前を見ながらそう言うと歩き出す


「氷裏。アンタに勝って、先進むから」

「あたしも…ここで止める」



目が追い付かない。それはこのような現状を指すのではないか








「分かってない。分かってないね…そんなので私は。私たちはやられない!!」
リンが駆ける
「速いっ!ア゛ッ」
ゆうりが飛ばされる

「っ…前と、桁違い」
「当たり前だよ。だって…私たちは負けたくないから!私たちは…戦わないといけないからっ!!!」






「ちょっ何あれっ?強いって強すぎだって!!」

目の前の魔道師を指さし舞衣香が言う

「あれは…おそらく“あのお方”の分身。あのお方の魔力で作ったモノだね」
ターナが冷静に言う
「冷静に言ってる場合かっ!来るぞ!!」







「なんでっ?!どうして?!!」
「なんでっ?そんなのてめぇ等が来たからだろう!!」
つららの問いにルイが応える
「だから、なんでっ?!理由になってないって言ってるの」
つららがルイと距離を取る

「なんで?…来なかったら良かったんだ。お前たちが、来たから」






目が開く

菫色の髪が揺れる


淡い翠色の瞳


「…どこ?」


声は誰にも届かない







「危なっ!」
槍で疲れる寸前で澪がしゃがむ
「≪水晶≫!!」
澪とミユの間にできる水柱
それを避けるように距離をとるミユ
ミユは黙ったら構える

「なんで…姉様!!」
澪は立ち上がり叫ぶ
「貴女は誰よりも、強く、だれよりも優しかった…。なのに、どうしてっ?!」
頬を走る一筋の滴

「…貴方ガ、私タチノ敵ダカラ。」

“私タチ”それは複数の人間を指す
感情は出ていない。なのに感情のこもっていない言葉に痛いほどの感情が込められているような気がして
澪は震える


その戦いを見ていたイクト

「ミユ…俺は、俺はっ」
拳を握りしめていた










「どうして?」
ゆうりは言う
「何が…」

「貴方は知らないの?!今、何が起きようとしているかを…」
「関係ない」

リンは言い切る


「だって、もう戦わなくてもいいじゃない?!」
ゆうりが言う
「どういう…意味」



「貴方は誘拐されてここにいるのよ?なら私たちとここを出てもいいんじゃなくて?」
夏未が言う
「誘拐?」
リンが聞き返す
「そうだ。お前は5年前に誘拐されてここにいるのだろ?お前の親も探している」
それを聞くとリンは目を見開いた

そして狂った様に笑った

「嗚呼。そういうこと?私を可哀想に…誘拐されて、親と引き離されて、無理やり戦わされている子ってこと?」
笑いながら尋ねる
「現にそうだろ」
豪炎寺が言う

リンは黙り下を向く








そして、小さな声が返ってきた












「何も、分かってないね」