二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: そこに空があるから [inzm] ( No.460 )
- 日時: 2012/07/29 19:51
- 名前: 夜桜 (ID: KY1ouKtv)
100話「無機質な涙」
小さな頃
俺はこの世から消えてしまいたかった
俺がいなくても、誰も困らない
俺が存在しなくても、代わりはいくらでもいる
小さい頃、ずっとそう言い聞かされてきた
何故、それが俺にとっての常識だったのか、俺にとっての常識は世間の常識と違った
どちらにせよ。俺にとって、世界はクロしかなかった
*
少女は目を開く
「わかった」
ひとこと呟いて
山吹色の短い髪が風に揺れる
「…お願い。間に合って」
*
冷たい氷は誰かの心の冷たさ
降り注ぐ花の温かさは誰かの心の温かさ
「っ!!≪氷音楽≫!!」
小さい氷が舞う
「効かない!」
かがりは全ての氷を防ぐ
いつものツインテールはすでに解かれている
「やっぱ、強いね…」
氷裏が笑う
「何言ってるの。今更」
かがりは当たり前と言うように軽く笑う
「≪氷雪・雪姫≫」
純白の刀
穢れない刀
澄んだ紅色の瞳
なびく銀色
「決着を、つける…!!」
氷裏が言う
「そうね。そろそろ、こっちも…時間がないわ」
かがりが言う
蒼の世界
何処からか漏れる水
それが落ちた時が合図
2人が一斉に走る
出来事は一瞬のものだった
だが、それは何時間もあったものだった
一瞬の出来事もスローモーションの様に目に映る
その場に立っていたのは誰?
*
目を開けたとき目の前で槍は止まっていた
光のない緋色の瞳から大粒の涙を零して彼女はそこに立っていた
「………。ねえ、さま」
震える声
ミユは何も言わない
震えながら無理やり手を止めている
でも少しずつ澪へと進む槍
それを止めようと後ろからミユを抑えるイクト
「ミユッ!やめろ!!これ以上…自分を傷つけるなっ!」
彼の精一杯の心の叫び
*
煙が晴れたとき
青い炎が消えたとき
つららの前に立っていた菫色の髪の少女
ルイと対峙するように、つららを守るようにそこに存在した少女
流してしまった涙が止まるほどに固まり、目を見開くルイ
「何を、しているの…」
少女の声
「なんでだ…ユノ」
再び、一筋の涙が頬を伝う