二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: そこに空があるから [inzm] ( No.460 )
日時: 2012/07/29 19:51
名前: 夜桜 (ID: KY1ouKtv)

 100話「無機質な涙」

小さな頃

俺はこの世から消えてしまいたかった

俺がいなくても、誰も困らない

俺が存在しなくても、代わりはいくらでもいる

小さい頃、ずっとそう言い聞かされてきた



何故、それが俺にとっての常識だったのか、俺にとっての常識は世間の常識と違った




どちらにせよ。俺にとって、世界はクロしかなかった









少女は目を開く


「わかった」


ひとこと呟いて


山吹色の短い髪が風に揺れる




「…お願い。間に合って」









冷たい氷は誰かの心の冷たさ


降り注ぐ花の温かさは誰かの心の温かさ



「っ!!≪氷音楽≫!!」
小さい氷が舞う

「効かない!」
かがりは全ての氷を防ぐ




いつものツインテールはすでに解かれている




「やっぱ、強いね…」
氷裏が笑う

「何言ってるの。今更」
かがりは当たり前と言うように軽く笑う


「≪氷雪・雪姫≫」
純白の刀


穢れない刀

澄んだ紅色の瞳


なびく銀色


「決着を、つける…!!」

氷裏が言う



「そうね。そろそろ、こっちも…時間がないわ」

かがりが言う




蒼の世界

何処からか漏れる水

それが落ちた時が合図


2人が一斉に走る






出来事は一瞬のものだった


だが、それは何時間もあったものだった



一瞬の出来事もスローモーションの様に目に映る




その場に立っていたのは誰?












目を開けたとき目の前で槍は止まっていた


光のない緋色の瞳から大粒の涙を零して彼女はそこに立っていた



「………。ねえ、さま」

震える声



ミユは何も言わない


震えながら無理やり手を止めている

でも少しずつ澪へと進む槍


それを止めようと後ろからミユを抑えるイクト


「ミユッ!やめろ!!これ以上…自分を傷つけるなっ!」


彼の精一杯の心の叫び










煙が晴れたとき


青い炎が消えたとき


つららの前に立っていた菫色の髪の少女


ルイと対峙するように、つららを守るようにそこに存在した少女



流してしまった涙が止まるほどに固まり、目を見開くルイ



「何を、しているの…」

少女の声


「なんでだ…ユノ」

再び、一筋の涙が頬を伝う