二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: そこに空があるから [inzm] ( No.466 )
日時: 2012/08/16 16:34
名前: 夜桜 (ID: KY1ouKtv)

 102話「過去」

ずっと、苦しかった

逃げ出したかった

でも、そんな気持ちを悟られたくなかった

少なくとも、自分の誇りで、自分の自慢であるあの子には…


私は、偶然の出会いに感謝した






なにもわかっていない、少女は言った


「私は好きでここにいる。誰にも強制されてなんかいない。私は、私たちは…此処が好きだから
 此処にいることを望んでいるから…だから、貴方たちと戦うの。自分たちの家を守るために!」

リンは言う

「守る?…で、でも。現に貴方の親は捜索届も出しているわ」
「お前の家は、親のいる場所だろ」
夏未、豪炎寺が言う


「…私の親はエゴの塊だった」

リンは告げた

冷めた目で、絶望を知る眼で




リンは語る

自分の過去を


「私は、彼らの人形だった

 外では優しく、優秀な人の“親”
 でも…家(なか)では親の皮をかぶった鬼。“悪魔”


 良い子に、良い子に。彼らの望み通りに生きなければいけなかった

 自分は私を傷つけるのに、他で傷つくと過保護のように心配してた
 それが…怖かった。だって、どれが本当のあの人たちなのか、分からないから」

リンはぽつり、ぽつりと言う

「でも、最後は決まって…」

 『何やってんだよっ!!』

「暴力だった。何も、出来ない。私には彼らの望む人形に…操り人形でいるしかなかった…

 そんな時--------------------みりあに出会った」






「ユノがいなくなって。狂って…

 知ったんだ。ユノは死は意図的だったって!俺。どうしていいか分からなくなって」

ルイは混乱し言う

「そんな時だ。アイツにあったのは…。アイツは、俺を、俺たちを救ってくれた!」

--- アイツの言葉に救われた

  アイツという存在に、救われた ---






「俺が悪いんだ」

光の灯った目になった心結を見てイクトは言う

「あの時。俺は、ミユを見つけた。あれだけの数の魔物を目の前にして、臆せず戦う
 それが、凄かった。ミユは倒れてた。俺は…ほっておけば良かったのに…
 俺はミユを連れて行った」

イクトは言う
澪の中で心結が消えた5年前が明らかになっていく


「はじめは、怪我の手当してさっさと戻すつもりだった。でも…俺が、俺が悪いんだ」


「それは、違うわ」

心結が言う

「違うの。イクトのせいじゃないわ。あの時、貴方たちについていくと決めたのは私だもの」

心結は静かに言う


「当時、周りの期待が…重たかった。そして、耐え切れなくなった

 だから、私は逃げたの。それから…あの人の考えに共感したから


 此処を、逃げ場にしたの。皆、傷ついて此処にいる。なのに…私はそんな彼らを逃げ場にした」

心結が苦しそうに言う


「そんな事、ない。俺は…大切な奴を…。自分で勝手に孤立した、馬鹿な奴さ」

「…なんで、自分を貶める事しか言わないの。アンタたちは」
澪の目から雫が零れる






「ねぇ、アンタは、聞かないの?妾たちのこと」
戦人をあらかた片づけたアンが美月に言う

「聴いたら、応えてくれるの?」
「妾のことはどうでもいい。だけど…あの“お方”を悪く思われるのは、嫌だから」


「…妾は昔から、自然治癒能力が高かった。だからよく言われたわ」
アンは目を伏せる

「-------------------------------------“バケモノ”って」


美月はそれを黙って聞く

「でも、あのお方は言ってくれた!『素晴らしい』って…凄い力だって」
そう言うアンの瞳は涙でにじんでいた
「そのとき、妾は初めて…この力を認めることができた」


「たしかに…貴方のその力は凄いわ。誰かを守るために、戦うことができる能力だよ」






「仕事でみりあは私の住んでいた町に来ていた。みりあは私に言ったわ

 『泣けばいいのに』
 『子供のくせに遠慮とか我慢とか覚えて周りの言うこときいて。
  そんなの、大人にでもなってから訊けばいいのに』って

 初めて、私に気づいてくれた。それに、救われた。みりあは『また来る』と言った
 けど、二度と、私の前に現れなかった」

リンは儚く笑みを浮かべ言う

「まってたのに、来なかった。来てくれなかった。しかも…段々と、親の“狂い”が悪化した
 
 あの時、本気で死ぬと思った。本気で…死ぬって
 でもそれと同時に私は嬉しかった

 “やっと、楽になれる”って思った。嬉しかった

 でも死ななかった。あのお方が助けてくれたから」


自分が世界で一番、幸せと言うように笑む


「あのお方は言ってくれた
 『一緒に行こうか』って。私を見て、私を知って…私を、私たちを救ってくれた!」


リンの瞳には潤んだ光が見えた






“もしも…出会いの順番が違っていたら、何か変わってたのかな”