二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: そこに空があるから [inzm] ( No.479 )
- 日時: 2012/08/27 19:36
- 名前: 夜桜 (ID: KY1ouKtv)
105話「銀色の涙」
一瞬の出来事だった
穢れのない純白の刀が地に落ちる
銀色の髪が舞う
空気しか掴めていない投げ出された腕
叫ぶことも声を上げる事もしない銀色
--- 墜ちる。すぐに理解した
下すらも見えない暗闇に墜ちると
でも、それで良いのかもしれない
もしも、出会い方が違っていたら… ---
「————もっと別の未来があったのかな…」
空しく響くことのない声
「さよなら…何もできない、あたし」
誰にも聞き取れない程の小さな声で呟く
抵抗はしない
墜ちまいと足掻くこともせず銀色の少女は重力のまま墜ちてゆく—————
—————はずだった
「——————え」
腕が掴まれている事に気づき少女は———氷裏が声を漏らす
「何、勝手に終わらせてるのよっ」
苦しそうに表情を歪ませながら氷裏の腕を掴むかがり
「離すんじゃ、ないわよ。死んで終わらそうなんて甘い考え捨てなっ!!」
「…なんで」
「何ででしょうね。こっちが聞きたい…いいから、黙ってそっちの手も伸ばせ」
引っ張り上げられた氷裏は困惑した表情のまま倒れている
荒い息のまま座り込んでいるかがりの横で
「意味、分かんない。馬鹿じゃ、ないの…」
震えた声で氷裏が言う
「それはあたしも同感。バカよ。死のうなんてバカじゃないの。なんで死にたくないって足掻かないのよ」
いつの間にか氷の牢は消えている
「救え、ない…あたしじゃ、救えなかったから」
氷裏が上半身を起こし言う
「今まで…ずっと彼奴に助けられてきた。でも、あたしじゃ救えないからっ」
銀色の髪が儚く揺れる
「ねぇ。アイツって誰」
かがりが聞く
牢からのあった場所から近づいてきたラティアが言う
「ターナもルーナも…貴方たちの名前は氷裏、アンタの名しか出してないわ」
付け足すようにそらが声を上げる
「思い出した様に言うことも能力だけだったりして…2人は貴方たちの情報をまったくこっちに渡さなかった」
それを聞き氷裏が目を見開く
「だから、私たちは彼方たちの上にいる人間を知らない。帝王ゼレフの他に誰がいるの」
「…帝王、か。確かに、今の彼奴は帝王かもしれない」
「でも、あたしたちは帝王の言う事なんて聞いてない。訊かない。あたしたちが従っているのは…」
氷裏が目を伏せる
「救えなかった。そう言ったわね…誰を?」
かがりが言う
「…あたしたちは全員、心の何処かを壊しているわ。彼奴は、あたしたちに手を差し伸べてくれた…」
氷裏が強く言う
「あたしの知っている事を貴方たちに教えるわ」
「帝王ゼレフに乗り移られた哀れな少年—————
—————————“レオン”の事を」