二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: そこに空があるから [inzm] ( No.493 )
- 日時: 2012/11/18 21:27
- 名前: 夜桜 (ID: KY1ouKtv)
108話「ひとこと」
しがらみのない世界が
こんなにも広いと知らなかった
鎖のない日々が
こんなにも温かいと知らなかった
名前で呼ばれる事がこんなにの喜ばしいことなんて
ずっと知らなかった
“全部、教えてくれたのは…他でもない彼方”
*
静まり返った空間
銀色の髪が儚く揺れる
紅色の瞳が冷静に静かに目を閉じる
「これが、あたしとレオンの出会い。それから、2人で各地を回りここにいるメンバーを集めた」
氷裏が言う
「レオンが望んでいたのは“倖せ”あたしたちのような、子供を増やさなための“場所”を作ること」
「それなら、どうしてっ」
ティアラが声を出す
「…。簡単よ。ゼレフがレオンを乗っ取ったから」
氷裏は淡々と答える
「そっちの姫様はもう気づいているでしょ?」
氷裏がラティアを指し言う
「えぇ。強い思いには…強い光には常に“影”があるもの」
「影…闇ね。だけど、それぐらい誰にでもあるもの。どうして」
かがりが聞く
「レオンは自分のことを“罪人”と呼ぶ。あたしたちに会う前、大切な人を傷つけたと言っていた…」
「っ!」
息をのむ音
黒色の髪が微かに動く
「レオンには、闇がある。消えない傷がある。それにゼレフがつけこんでも不思議じゃない」
氷裏の瞳から冷たい雫が落ちる
「あたしは、あたしたちは…知ってても救う術を知らないから…救うことができないから
でも、彼の傍を離れるなんてこともできないから…だから、ゼレフの言う事と分かっていても
それに従った。だって、独りなんてできないから、ゼレフなんでどうでもいいけど、レオンは
あたしたちにとって…大切な人だから。あたしたちにとって…」
紅の瞳から零れる透明な涙
「バカじゃないの?」
響く声
「間違ってると知ってるなら教えてあげなさいよ」
かがりが言う
それを聞き氷裏の目が見開く
「ねぇ…わかる?」
そらが氷裏の手を取り言う
「手を伸ばせば届く距離に私たちはいるの。声を出せば聞こえる場所に貴方たちはいるの」
誰でも安心する様な笑みを浮かべそらは言う
「独りじゃないの。貴女はそれを知ってる…大切な人がいるの。なら助けよう
こんなところで立ち止まってる場合じゃないよ」
「素直になってみるのも良いと思うよ?ひとことでこの場は変わるよ」
アフロディが言う
「そうそう、ねぇ?大丈夫だよ」
ティアラが満面の笑みで言う
リオンはその横で目を細めていた
「…助けて、レオンを助けてっ」
氷裏が顔を上げ言う
「お願い。レオンを救いたいの…レオンをゼレフから救い出したい!!」
*
「《氷裏が裏切ったか。予想外…か。余興にしては面白い》」
楽しげな声
「《全ては俺のモノだっ!!》」
*
《誰か、はやく来て。止めて…すべてが揃う前にっ》
“知っているのに、見えているのに…どうして、何もできないのだろうね”