二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: そこに空があるから [inzm] ( No.498 )
- 日時: 2012/12/20 17:02
- 名前: 夜桜 (ID: KY1ouKtv)
109話「進む」
あの時 あの場所
まばゆい光の中で悲しそうな笑みを浮かべ
涙を流していた貴女の“心”に気付くことができなかった
だから、現在
こんな“悲劇”が繰り返されているのね
*
「…救うって言っても、どうする?」
かがりが言う
「そうね。本来なら巫女の力を使って闇を封ずればいいのだけど」
ラティアがかがりの手当てをしながら答える
「この先にいるんでしょ?ゼレフもレオンも」
そらが言う
「えぇ。いるわ」
氷裏が答える
「扉越しでも、悍ましさが感じられる」
アフロディが言う
「ゼレフは、待っているの」
氷裏は言う
「時を、待っているの。自分で世界を終幕へと導くために、待っているのよ」
「待ってるって、完全に復活するってこと?」
アフロディが尋ねる
氷裏は頷く
「そうなったら…封ずることも、倒すことも難しくなる」
かがりが言う
「じゃ、じゃあ急がないと!」
ティアラが慌てて言う
「待って。慌てても無駄よ。慌てて、見失ってはいけないのよ」
そらが静かに言う
*
私は、何をしているの?
どうして、こんな処に来てしまったの?
嫌だ。帰りたい。すぐに…
私のせいだ。全部、全部、全部っ
“落胆”という言葉は好きではない
でも、今の私にはその言葉がぴったりするのかもしれない
行きたくない
この先に進みたくない
“あの人”に会いたくない
ちがう。会いたい
逢いたくて堪らない
でも、嫌だ。会えない
会ってはいけない
その資格が私にはない
だって、あの人を追いつめてしまったのも
この状況にしてしまったのも、全部
私のせい…なのだから
*
「リオン?」
そらは氷裏の治療を終わらせたリオンを見る
「…なんでも、ないです」
リオンはややグルグルと回す瞳を伏せ言う
「そう。なら良いのだけど…。リオン、私の話を聞いてくれる?」
そらはそう言い小さい笑みを浮かべた
他はラティアを中心にゼレフ、レオンとの戦いの準備をしていてリオンとそらの会話は聞こえることはなかった
「リオン、これから話すことは単なる私の独り言よ。だから聞き流してくれていいわ」
そらはリオンを見る
「小さな女の子のお話よ。その子はね、とても大切な人を知らないうちに追いつめてしまったの。とても大切な人よ
最初はバカな子供の我儘だったの。ちょっとしたことで反抗して、すぐに謝ることができなかった
でもね、それが間違いだった。その子にとって愚かな選択だったの
ようやく謝ろうって思った時…その子の大切な人はいなかった
探して、探して…知らないうちに森に迷い込んでね、魔物に見つかってしまった
その子はもともと魔力が高くて魔物にとって魅力的だったのね
魔力が高くても子供。戦いというものを分かっていなくて長く戦うことはできなかった
魔物はその子に止めを刺そうとしたわ。でもその子は死ななかった
直前でその子の大切な人が来てくれてね、その子を救ったの…」
そらは寂しそうに言う
それと反射的に少女が助かったことに僅かに笑みを見せるリオン
「でもね…」
そらは続ける
「その子の大切な人は亡くなってしまったのよ。その子は…ずっとそれを引きずって」
そらは静かに言う
「そんな」
リオンは愕然とする
「だからね、リオン。後からじゃダメなのよ。怖がって先に進むことを止めてしまえば
後悔しか残らない。だから、先に進むことを止めてはダメ
大丈夫。貴女には私たちがいる。先に進むためのモノがちゃんとある」
そらは先ほどとは打って変わり柔らかな笑みをみせる
「そらさん…その子ってもしかして」
リオンが顔を上げる
「さぁ?私が話したのはただの昔話だよ?リオンは知っていた方が良い気がしたの」
気にしないでね、とそらは付け足して笑う
*
前へ進むことを止めてはいけない、と彼女は言った
私にも前へ進むためのモノがあるからって
本当は怖くて、まだ進みたくないと思っている
それでも、私は______________
“前へ進むことは怖くない。そう言ってくれた人はもう、いない”