二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: そこに空があるから [inzm] ( No.511 )
- 日時: 2013/03/04 22:12
- 名前: 夜桜 (ID: KY1ouKtv)
114話「レオン」
聴こえた
確かに、聴こえたんだ
この無音の世界で
崩れゆくセカイしかわからないこの場所で
たしかに、僕を呼ぶ声が
*
ゼレフの異変に誰もが気が付いた
攻撃の手さえも止まってしまう
静まり返った空間に微かに聞こえた声
「…り、お…ん」
“リオン”と途切れながらも呼ぶ声
リオンの瞳からは一筋の雫が流れた
「…おにい、ちゃん」
「レオンっ」
明らかに先ほどまでとは違う雰囲気をもつ少年
「どうなってんのよ」
かがりが言う
「あれは…多分。ゼレフの支配下からレオンが逃れた」
そらが目を見開き言う
“ゼレフほどの魔力を、一時的でも上をゆくというの…”
「り、おん」
虚ろとしているがしっかりとリオンを見てゼレフ否レオンが言う
「お兄ちゃんっ!」
リオンが駆け寄ろうとする動作はすぐに止められた
「来るなっ!!!」
“ビクッ”とリオンが止まる
「どう、して…?なんで。お兄ちゃん」
「レオン…見えてんでしょ。ちゃんと、アンタ自身で。なのに、どうして」
氷裏が言う
「ひょうり…逃げろっ!頼む、から。逃げて、くれっ!!氷裏…リオン連れて
他のみんなも、一緒に………逃げ、てくれっ…!!」
苦しみの中で発するような声
「もう、抑えきれ…ないん、だっ!だから…はやく、ここ…から。逃げて、くれぇっ!!!」
沈黙の中に響く足音
ゆっくりとゆっくりと
少年へと近づく音
立っている事さえ出来ず崩れ落ちている少年が顔を上げる
目の前に映るは美しい銀色の少女
普段は強気で勝気な紅色の瞳が柔らかく細められる
少年、レオンへと差し出される手
否、レオンを氷裏は強く抱きしめた
「ねぇ。レオン、貴方はあたしが信用できない?」
震える声
「貴方を置いて逃げれるほど、あたしは薄情じゃ…ないわ」
それは温かく優しげな声
「神聖な、儀式…みたい」
そらが呟いた
「リオン。行って、いいんだよ。貴女の意思で」
ティアラがリオンに言う
「いまは…無理、です。私の声はきっと、お兄ちゃんに届いた。でも、5年も経ってる
その間を知ってるのは氷裏さんで。だから、きっと私の声なんかより、氷裏さんの心(こえ)が
お兄ちゃんに届いてくれる…そう思うんです」
リオンは真直ぐにレオンと氷裏を見て答えた
静まり返る空間
「レオン。ずっと、大切にしていた。あの子が貴方を信じていた
貴方を呼んでる。だから____________」
小さな嗚咽が響く
「_________一緒に。貴方もここを出るの。貴方もここを、あの子と一緒に
そして、生きるのよ…。今更“逃げろ”なんて言わないで」
「氷裏…。ぼく、は…」
「大丈夫だから。一緒に生きてくる人が、いるでしょう」
強い笑みを浮かべ氷裏はしっかりとした口調で言う
“あたしたちは貴方を信じているから”
「レオ、ん…っ」
氷裏の声が、震えた
レオンにのしかかるかの様に体制を崩す
冷たい床に倒れこむ銀色
美しい銀色に晴れて映る紅
広がる_____________赤色
「ひょう、り?」
「…氷裏ィィィィィイィィィイィイイィイっ!!!」
思いもしない光景が広がる
悲鳴に近い悲痛な叫びが響き渡る
*
だれも望まぬ悲劇
ねぇ。もうやめて…
貴方の願いは現在(いま)を生きる者たちに託しましょう?
だから、もう…これ以上の苦しみを悲しみを増やさないで
“私は貴方の優しさを知っているから”