二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブンGO 天使は白銀の世界でナニを願うのか ( No.8 )
日時: 2011/11/17 20:43
名前: 真由 (ID: NGqJzUpF)

3 地上で暮らすにあたって



天使がいた。
わたしに「自分の意志で決めろ」と囁いた。
こんな奴に返事するのも癪だから、無視してやった。


人間がいた。
天使と同じ言葉をつかった。「助けていいのかな?」
どんな奴かと、目を開いた。

「あ・・・生きてた」

よかった、と微笑む人間。どこか天使に似ている雰囲気。
人間は木を見上げる。口には出さず、話している。




生きてたよ。
よかったね。
誰も死んじゃいないんだ。




葉のない幹が揺れた。

「ところで君、どうして倒れていたのかい?」

同じ目線の高さで、琥珀色の瞳を見つめる。清らかだった。曇りがなかった。

「・・・死のうと思って」

「ふぅん」

人間は首をかしげる。
嘘では、ないから。騙しては、いないから。
琥珀色がわたしを責める。

「それで?」

一瞬吹雪が止んだ。
それで? と人間の背後の天使が意地悪く真似した。
睨むと消えたが、人間はわたしが警戒していると勘違いしたようだ。

「えーっと、白恋の生徒だよね。僕はサッカー部監督に就任した吹雪士郎。よろしくね」

差し出された手。おもいやりの手。
みんなを思い出して、胸が痛む。

「・・・白恋中の・・・・・・羽入・・・真白」

精一杯の嘘だ。生きていくための嘘。
それでさえも、琥珀色が苛む。

「へぇ・・・真白ちゃん。何部?」

次はどんな嘘だい? 天使がニヤリと笑う。ほどほどにしろよ、と。
正体がばれると体が消失するらしい。母さんの、必死の冗談かもしれぬが。
それでも、最後・・・とわたしは嘘をついた。

「・・・サッカー部っ」

胸の痛みも限界だった。
人間の手をつかみ、胸に当てて泣いた。
痛みは拭われなかった。
白銀の世界に、わたしのむせび泣きが染みわたる。
琥珀色へ。永遠に継がれる色へと。