二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【テニスの王子様】 お茶のお供に、甘い話。  ( No.33 )
日時: 2011/12/27 15:32
名前: 生死騎士 (ID: .WGhLPV.)

● 『白い、君。』No,6



暗い、黒い空間。

左右も上下も分からない空間で、私はもがく。

生きようと。

再びあの世界へ立とうと。

皆の声を聞きたいと。

神様がいるなら、

どうか私の願いを叶えてほしい。

お願いだから、

皆に会わせてほしい。




『雅樂』

あ、

精市の声だ。

『先輩』

これは・・・赤也?

私は声のする方へ、体を向ける。

『雅樂』

『雅樂』

皆の声。

聞こえる。

待って、今行くから。

感覚の無い右腕を精一杯伸ばす。

手、届いて・・・

おねがい、とどいて・・・



私の体に、全ての神経に、

感覚が蘇った。




              ***






無機質な機械の音。
両手に感じる、温もり。
目の前には、かすかにぼやけてはいるけれど、

凄く会いたかった、皆の顔。

「雅樂っ!!」

精市も弦一郎も蓮二も。
赤也も仁王も柳生も、ブン太もジャッカルも。
皆、居た。

「雅樂、分かる!?俺だよ!?」

精市が今まで見たこと無いほど取り乱している。
答えたかったけど、声が出ない。

ワ カ ル ヨ

まだ上手く動かせない口を無理やり動かして、そう伝える。
すると精市は私の手を強く握ったまま、ベッドの端に突っ伏した。
赤也に至っては、ぼろぼろ涙を流しっぱなしだ。

「・・・よ、かったっ・・・先輩、もう死んじゃうかと、思ったっす・・・」


私、死んでない?

ここは私の世界?

私、生きてるの?

生きてる・・・

生きてる・・・!

自分は確かに世界に存在していることが分かると、心の底から様々な気持ちがあふれ出してくる。
思考回路も回復する。

よかった。
これからどうなるんだろう。
皆に心配かけちゃったな。

そして、


お父さんとお母さんは。


両親の姿は何処にも無かった。
一人娘が生死の境を彷徨っていたというのに、だ。

しばらくすると先生が駆けつけてきて、私の身体検査を始めた。
そのときもちろん皆は部屋から出されたが、精市が立ち上がり際にチラッと見せた涙が気になり、先生の話なんて耳に入らない。
彼が泣くところなんて見たこと無かったからかもしれないが、あの時確かに私は、胸に小さな痛みを感じた。





         ***


翌日。
お父さんとお母さんが病室に来た。
特に急ぐ風も無く私の隣に立つ。

「気分はどうなの?」

「・・・大丈夫だよ。」

「そう。」

それだけ。
両親と話したいと、先生が病室を訪ねてくるまでに交わした会話はそれだけで終わった。

寂しいとか、そういう感情は抱かない。
これが当たり前だから。


看護婦さんたちに両脇を支えられてやってきた部屋。
先生の座る椅子の後ろには、レントゲンの写真が何枚か貼られている。

「先生、お話というのは・・・」

お父さんがいやに冷静な口調で問う。

「・・・」

「先生?」

少しためらった後、先生の口からでた言葉は・・・


私の人生を大きく左右させるものだった。