二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【テニスの王子様】 お茶のお供に、甘い話。 ( No.36 )
- 日時: 2011/12/05 20:39
- 名前: 生死騎士 (ID: IhKpDlGJ)
○ 『白い、君。 シークレットストーリー』
窓を雨がつたって、落ちていく。
雨はいい。
私を照らす太陽を隠してくれる。
太陽の光は、私が照らされるには眩しすぎる。
こんな私が世界に照らし出されないように、降りしきる雨は私の存在をかき消してくれるようだ。
その音で、誰の声も聞こえなくしてくれるように。
そんな雨を私は・・・
「ちょっと城崎さん?あたしたちの話、聞いてんの?」
「・・・あ、ごめんなさい。聞いてませんでした・・・」
私の前には、入学式のあの日ぶつかった女の子とその取り巻きがいた。
外を見るのに集中しすぎて、彼女らが何時来たのかすら記憶に無い。
ただ、彼女らの目的は分かっている。
「今日、屋上に来てって言ったのよ。」
私を虐めること。
幸村くんたちに気がつかれない様に、だ。
今のところ気づかれた様子は無い。
私も、気がつかれたくは無い。
無駄な心配はかけたくなかったし、なによりもこの程度のいじめは慣れっこである。
「分かった。」
私は笑顔でそう答えた。
そうしなければ、今日の虐めはいつもより酷いものとなるのは分かっていた。
少しでも、痛みは軽減したいもの。
それに、傷が増えれば彼らに気づかれる可能性が高くなる。
「じゃあ、待ってるから。絶対、来るのよ。」
「絶対」の部分をいやに強調して、彼女たちは去っていった。
私はふぅ、と息を吐いた。
放課後、屋上へ行こうと廊下を歩いていると、運悪く幸村くんに遭遇してしまった。
「雅樂、何処行くの?」
「えっと・・・図書室に、本借りに行くの。」
「そっか。そういえば、最近ずっとこっちの方来てるけど・・・なにかあるの?」
「なっ・・・なんにもないよ。たまたまだと思う。」
「そう?・・・まあいいか。じゃあまた明日。」
「うん。」
そう言って彼は行ってしまった。
気がつかれては無いみたいだけど・・・怪しまれてる。
いつか気づいてしまうかも知れないのが怖い。
私はそんな考えを振り払うように、屋上への道を急いだ。
「あ、来た。」
屋上の扉を開けると、既に彼女らは集合していた。
手にはそれぞれ、小物を持って。
屋上は雨で濡れていて、その向こうにもう一つ別の世界があるような錯覚を思わせる。
「よーしっ、じゃあ今日も遊ぼっか!」
取り巻きの中で特に元気な子がそう言うのと同時に、私へ何本もの手が伸びてくる。
殴る。
蹴る。
顔や腕、脚は肌が露出して傷が目立つので、それらの攻撃がくるのは専ら腹だ。
鳩尾にヒットしても、私は声一つ出さずにうずくまるだけ。
それがルール。
この虐めに関しての、破ってはいけない掟だった。
誰にも気がつかれないように。
そして今日の、メインイベントがやってきた。
一人の女の子がリーダー格の子に手渡したのは、カッターナイフ。
「今日はこのカッター使おう。」
「切るのは・・・やっぱ太ももあたりがいいかなぁ?」
「そうだね〜」
これにはさすがの私も血の気が引いた。
今まで殴る蹴るの暴行はあったけれど、刃物で切られたことは無い。
そんな思考を知ってか知らずか、彼女たちはうずくまった状態の私のスカートを少しめくると、私に笑ってみせた。
そして、カッターを振りかぶると私の脚に勢いよく突きたてた。
「・・・っ!!」
刃を抜いた部分から、血が溢れる。
「わぁ、すっごい!」
周りから歓声があがる。
その声におされる様に、カッターが再び宙をきる。
が、その刃が私の脚に刺さることは無かった。
カランと渇いた音をたてて、カッターが遠く離れた場所に落ちる。
それと同時に床の上を、一個のテニスボールが跳ねた。
「なにしてんの?」
「なっ・・・」
うずくまったまま視線を動かし、声のする方を見た私は硬直した。
幸村くんが、そこに立っていた。
彼の手が、もう一つのテニスボールを放し、床で弾ませてから再び掴んでいる。
まさか・・・
まさか、あの場所から正確にカッターナイフだけを弾き飛ばした・・・!?
「・・・その子にもう一度、手をあげてみなよ。今度は君達に当てるよ?」
無表情に、静かに、低く彼は言い放つ。
それだけで威力は十分。
「っ行くわよ!!」
リーダーの声で凍り付いた様に突っ立っていた全員が、ぱっと走り出す。
あとに残ったのは、倒れたままの私と彼。
「雅樂」
彼はラケットをわきに置くと、私の上体を起こした。
信じられないような顔をする私が次にみたのは、凄く苦しそうな彼の顔だった。
「どうして、言わなかったの?」
答えられなかった。
答える前に私が泣いてしまいそうだった。
「・・・だって・・・私・・・」
「馬鹿。」
幸村くんに怒られたのは、多分初めて。
こんなに苦しそうな表情をする彼を見るのも、初めて。
「俺、言ったよね?なにかあったらすぐに言うことって。」
「・・・ごめんなさい・・・」
幸村くんはずっと眉間に皺を寄せていたけど、表情を和らげるとぎゅっと私を抱きしめた。
「まぁ、こうして見つけられたんだし、いいけど。」
その日から、私はいじめを受けなくなったと同時に、彼に嘘を吐けなくなった。
── アトガキ ──
すげぇ、2000文字いった・・・(汗)
オチ?なにそれ、美味しいのかい?←
今連載中の、『白い、君。』の雅樂たちが一年生ごろの話です、ハイ。
分かりにくくてすみません。m(−−)m
スルーしていただいて結構です、むしろスルーしていただきたい!!((