二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【テニスの王子様】 お茶のお供に、甘い話。 ( No.4 )
- 日時: 2011/11/18 20:37
- 名前: 生死騎士 (ID: v8DmNHeA)
● 『白い、君。』 No,3
幸村くんに連れてこられた場所は、放課後になって人気が無くなったグラウンドの、桜の木の下。
柳くんと真田くんも一緒だった。
「何か俺達に話す事、あるんだろう?」
そう言って幸村くんは私の顔を覗き込む。
この人には何も隠せないな、と思った。
どうせ捨てられるのならば、苦しみたくない。
早く真実を告げて、それで早く放って措いてくれた方がいい。
複雑な思いと共に、私は重たい口を開いた。
「・・・えっと・・・」
でも言葉が上手く繋げられなかった。
会って一日しか経っていないのに、初対面の私に優しくしてくれた彼らに別れられるのがどうしようも無く怖くなって。
そんな私を見た幸村くんは、私の肩にそっと手を置き私と目線が同じになるように屈んだ。
その顔を見て、ハッとなる。
真剣そのものの表情。
入学式の前の件とは、また違ったオーラ。
言わなければ、と思った。
言っていいんだ、と思った。
後ろを見ると、柳くんと真田くんが安心させるように頷いてくれて、そこでやっと私は言葉を発することができた。
「・・・あのね、私、体が弱いの。生まれつき、病弱で・・・体に無理をかけちゃいけないから、何にもできなくて・・・使い物にならないの。」
そう、私は使えない子。
「いつも苛められてて・・・」
存在価値の無い子。
「皆に役立たずって、言われてて・・・」
私は・・・
「・・・でも・・・っ・・・」
最後まで、続けられなかった。
目から涙がどんどん溢れてきて、視界が霞む。
拭っても拭っても、止まる事はなかった。
言葉と共に、今まで「辛い」「苦しい」という感情を殺してきた記憶が、驚くほど鮮明に蘇ってくる。
教科書やノートが無残に引き裂かれて、暴言が書きなぐられていたこと。
クラスの子たちに、一時呼吸困難になるほど蹴られたこと。
周りの大人たちに哀れみの視線を向けられたこと。
全部ぜんぶ、思い出して。
その分、胸が苦しいほど痛くなった。
痛くなった分、涙が頬を伝って、落ちてゆく。
何時の間にか、口を衝いて本音がこぼれた。
「・・・だからっ、幸村、くんたちにっ・・・離れていっ、てほしくない、のっ・・・!!」
もう辛いのは嫌。
苦しいのは嫌。
・・・捨てられるのは、嫌。
今までずっと我慢してた感情が、まるでせきを切ったように溢れていく。
── ぽん、と。
幸村くんの手が、私の頭にのった。
「・・・ずっと、そうだったの?」
頷く。
「ずっと、誰も助けてくれなかったの?」
頷く。
「ずっと、一人で苦しんでたの?」
頷く。
「顔、上げて。」
首を振った。
今は顔を上げられない。
こんな顔、見られたくない。
すると頭にあった手が頬まで下りてきて、強制的に上を向かされた。
目の前にある彼の顔は、ちょっと怒ったようだったけど、すぐに優しい笑顔に戻って。
そのままの状態で、涙を拭ってくれる。
「俺達は、離れていったりなんかしないから。」
「・・・」
「雅樂が使える、使えないなんて関係ない。人間は物じゃないから。雅樂は俺達の友達だよ?」
「・・・」
「それとも、雅樂は俺達を友達だと思ってくれてないの?」
それには全力で首を振った。
「うん、分かってる。」
違う。
違うよ。
私は、貴方達と・・・
「絶対、離れていったりしないから。雅樂がもう苦しまないように、涙を流さなくていいように、独りにならないように。」
「お前を独りになどせん。これは約束だ。」
「俺達が雅樂を捨てる確率は0%。」
私が、一番聞きたかった言葉。
「雅樂、ずっと一緒にいよう。」
限界だった。
私はその場に崩れ落ちるように座り込んで、幸村くんの胸にしがみついて泣いた。
そんな私を幸村くんは優しく抱きしめてくれ、柳くんと真田くんは頭を撫でてくれて。
私は生まれて初めて、幸せだと思った。