二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【テニスの王子様】 お茶のお供に、甘い話。  ( No.8 )
日時: 2011/12/01 20:21
名前: 生死騎士 (ID: IhKpDlGJ)

● 『白い、君。』 No,5



「前にも雅樂の邪魔しちゃ駄目だって、注意したよね?」

精市の凄まじい圧力に、その対象になっていない私まで寒気がはしる。
それと同時に二人も私から離れた。

「いや、あの、幸村くん・・・?」

「グラウンド一周。」

「「はいっ!!」」

仁王とブン太が慌てて部室を飛び出していく。
これが『魔王』・・・ゴホン、『神の子』と呼ばれる精市の発言力である。
私はその発言力にいつも助けられている訳なのだが。

「雅樂、そろそろ花壇の方見にいく?」

精市は私に向き直ると、言った。
精市が育てている花に水遣りは、私と彼の日課となっている。
私は手にしていたバインダーを手近な場所に置くと、頷いた。

「うん、じゃあ行こうか。」

先に歩いていく精市を追いかけて、私も部室を後にした。



「精市、見て!昨日はまだ蕾だったのに、咲いてる。」

「ほんとだ。最近ずっと暖かかったからね。」

花壇に来てみると、一週間ほど前に植えた花の蕾が綺麗に開いていた。
薄い紫色のその花は、ときどきそよ風に揺れて。

その花が、一瞬霞んだ。

「・・・?」

一瞬だけ。
驚いて見れば花は元通り、風の影響で可愛らしく揺れている。

「どうしたの、雅樂?」

「ううん・・・なんでもない。」

あわてて首を振るけれど、再び視界が霞んで、歪んで・・・

「っ!?」

刹那、体の中心を貫くように激しい痛みがはしった。
目の前は既に真っ暗。
序々に全体の感覚が薄れていく。
呼吸が苦しくなっていく。


物事を考えるよりも早く、私の意識は途切れた。

「雅樂!!」

精市の声が、聞こえた気がした。





         ***



なんだろ、これ。

凄い苦しい。

痛い。

なんで誰もいないの?

精市は?

弦一郎は?

蓮二は?

赤也は?

仁王は?

柳生は?

ブン太は?

ジャッカルは?

皆どこ行っちゃったの?


ああ、そっか。

私はこれを知っている。

死だ。

今まで何度か経験した、死の感覚。

私もう世界から消えちゃうのか・・・



最期にもう一度、

皆に会いたい。