二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナズマ 銀色の歌姫〜最終楽章〜 ( No.115 )
- 日時: 2012/04/03 19:16
- 名前: ドロップ ◆8WWubVa7iM (ID: kG5vJqWm)
第十七楽章
真っ赤に染まって倒れている、和奏の姿。
なんだろう、この宙に浮いたような気持ちは。
夢を見ているような気分だ。
けれど、神様はこの出来事を夢で済ませちゃ、くれやしない。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
彼らの、絶叫。
「ファントムっ…!?」
「なぁ…起きてくれよっ…なぁ!」
「返事をして!お願い!」
その後に、木野達、マネージャーが来た。
「まって、今…応急処置を…ッ
冬花さん、救急車を!
夏実さんは水面機に水を張ってきて!
音無さんは今すぐに監督に電話!」
みんな、和奏の為に動いている。
けれど、俺だけ一人、立ち止まってる。
何をしていいのか、わからない。
すると、すぐさま和奏は動いた。
「ファントム!?動かないで、貴方は今ッ…」
「……きゃ……け、ない…」
「…え?」
和奏は、血を失った真っ青な顔で呟いた。
「わた、し…は、この、こ…たち、を……
まもら、なきゃ…いけ、ないん、だ…」
和奏が、そう呟いた瞬間、俺は和奏の下へ駆け寄った。
なぜ、すぐに駆け寄ったかはわからない。
けれど、心より体が反応する、と言う事はあると分った。
「もういいっ……」
俺は、和奏を力いっぱい抱いた。
「もういいよ…和奏ッ……」
俺の熱が涙に伝わり、俺の涙が和奏に伝わった。
「ッ…本当は、ずっと苦しかったッ…
父さんは出ていっちゃって、母さんは私に暴力をふるうんだッ…
それで、気晴らしにサッカーをしてもッ…悪人だと、咎められてッ…
せめて…私のような、境遇な子たちを、幸せにッ…したかった…
けどッ……私は、人を幸せにッ…することすら、出来なかった…」
「何を言ってるの…“和奏”」
エルザが、和奏に語りかけた。
「死んでいたような私に、“和奏”は私に希望をくれたんじゃないッ…」
「そうだ!“和奏”は、俺達を、幸せにしてくれた!」
一人一人、和奏に語るたびに、和奏はその分大粒の涙をこぼしていく。
「ッ……なぁ、最後に教えてくれ…」
和奏は、顔をこちらに向けた。
「私は、存在していて、いいのか?」
「当たり前だッ……」
和奏は、そのまま救急車に運ばれていった。
命に別状はなく、数か月入院すれば治るらしい。
和奏と一緒に居た彼らは、お日様園で保護すると言っていた。
きっと、幸せになれる事だろう。