二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマ 銀色の歌姫〜最終楽章〜 ( No.122 )
日時: 2012/04/22 19:28
名前: ドロップ ◆8WWubVa7iM (ID: Jp7wPE2D)

第十九楽章














「——私は、小学生の時、母親から虐待を受けてたんだよ。」



その言葉から、和奏の過去話が始まった。















—虐待される前は、すごく優しくて大好きな母さんだったんだ。

 そりゃそうだろ?母親を嫌う子供なんて、なかなかいないもんさ。

 所がある日、父さんの仕事が忙しくなって、父さんの帰りはいつも深夜になっていた。

 母さんも、最初のうちこそ気にしなかったが、父さんの帰りが遅いのが、もうずっと続いたんだ。

 そこから毎日、母さんと父さんのケンカさ。

 父さんが帰ってくれば母さんは罵声を口にして、それに対抗するように父さんは怒鳴りつけた。

 二人のケンカは、余裕で深夜を過ぎていたよ。しかもとても大きな音でね…

 寝ている私の部屋まで届いていたよ。


 そんな日がずっと続いて、父さんは私の兄と弟を引き取って家を出て行ってしまった。



 そこから毎日、地獄の日々さ。

 母さんからは虐待を毎日受けられた。

 その虐待も度が過ぎてきて、私を殺そうとしてきた。

 私は必死に逃げたよ。

 どんなに逃げても、後ろから母さんが追ってくるような気がしてね…

 きがついたら、私は何処か分らない場所に居た。

 怖かったよ。全く知らない地域にいる事はね…

 所が、その近くに私の母さんの妹さん…叔母さんの家の近くだった。

 叔母さんの家で、私は幸せに過ごせたよ。




 それから、何年も過ぎた。

 すると家の近くの公園で、男の子二人がサッカーをして遊んでいた。

 2人は、私に一緒に遊ぼう、と声をかけたんだ。

 嬉しかったな。遊びに誘われる事は、まったくなかったから。

 それで私は、サッカーを好きになったんだ。




 私の小学校では、サッカー団があってね。

 その助っ人で私は試合に出場したんだ。

 …自分で言うのもなんだけど、周りからは「歌姫」と言われてた。

 私を必要にしてくれる。それだけでうれしかったんだ。


 ところが、私が試合に出た時、なぜかチームメイトも、相手も、皆怪我をするんだ。

 挙句の果てに、死んだ人もいたっけな……

 その事件は、影山って奴が、私をどん底へ陥れようとしたらしい。

 皮肉なものに、私はその影山の通りに、サッカー界から姿を消した。










「…こんなものだ。それで、中学になってお前たちに出会って…
 今に至る、って感じだ。」



和奏は、フゥと一息ついた。



「…和奏、この日記って…お前のか?」



俺は、試合前に拾った日記を和奏に渡した。



「あ、あぁ…これは確かに、私の日記だ。
 けど、なんでお前が…」

「チルチルと、ミチルって奴から…
 お前を助けてほしい、って…その後に、あの二人のいた所にそれが落ちてた。」

「…そうか、あの二人が、か。
 どうやら私は、いろんな人に心配をかけたらしい。」





和奏は、安堵の表情を浮かべた。



俺も、その表情の和奏を見て、笑った。