二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナズマ 銀色の歌姫〜最終楽章〜 ( No.125 )
- 日時: 2012/05/18 18:22
- 名前: ドロップ ◆8WWubVa7iM (ID: E5D2o5gk)
夢を見た。
よく知っているはずの少女が、俺の頭を撫でてくれる夢。
なぜか俺は涙ぐんでいて、彼女は柔らかい笑みを浮かべていたんだ。
そして、彼女は———。
「朝だァっ!!!」
「ぅお!?」
よく知ってる、怒声が響いた。
第二十二楽章
「起きるの遅ぇよ。」
「だからって耳元で叫ぶ事ないだろ!鼓膜破ける!」
「そんなたやすく破けるなんて、お前さんの鼓膜はなってないねぇ。」
「な、に、をぉぉ……!」
「まぁまぁ、和奏ちゃん、風丸くん、落ち着いて?」
朝から和奏に叫ばれた。
しかも耳元で、大声で、だ。
…耳がまだジンジンしてる。どれだけ和奏の声量は凄いんだ。
「…そういえば、随分と眉間にしわ寄ってたけど、何かあったのか?」
「…眉間のしわ?」
もしかしたら、と俺は思った。
「あぁ、多分夢だと思う。」
「夢ぇ?どんな夢だよ。」
俺は、頭の中で必死に夢の内容を再生する。
「…よく知ってる女の人が、俺の頭を撫でてる夢。」
「よく知ってる女の人ぉ?誰だよ。もしかして彼女?」
「…誰かは、覚えてないんだよな。」
すると和奏はあからさまに二ヤリ、という顔を浮かべた。
「何?認知症?」
「違うっ!!」
♪ 〜 ♯ 〜 ♭
「あ、そうだ。」
和奏は、突然何かを思い出したように鞄をあさった。
そして、一通の封筒を手に取った。
「なぁに?それ。」
「ヨーロッパから。」
……ハァ?
「なんか、また歌手に復帰してほしいってオファーが来たんだよな。」
「えぇ!?本当!?」
「…マジか。」
…って事は、和奏は外国に行くのか?
「和奏ちゃんは、その…オファー、受けるの?」
「あぁ、そのつもりだ。」
和奏は、いつもの薄笑いを浮かべて、サラっと告げた。
「…って、うけるのか!?」
「あぁ。
せっかく私を頼ってくれたからな。」
「…そっか、残念だけど、和奏ちゃんにはそっちも方がいいわね。」
「そうだ!お別れ会を開きましょう!」
「そうね。お父さんにも頼んで、盛大なものにしましょう。」
俺の耳には、なぜかその真実を受け入れられなかった。