二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマ 銀色の歌姫〜最終楽章〜 ( No.99 )
日時: 2012/02/26 18:21
名前: ドロップ ◆8WWubVa7iM (ID: yU8XJsFi)

第十二楽章












   おかあさん、いたいよ。


——貴方なんて、いらなかったのよ!


       やめてよ、なんでこんなことするの?



——貴方のせいで、あの人はいなくなったよの!私を捨てて!



         ごめんなさい。

       あやまるから、やめて、ゆるしてください。


——貴方なんて、存在しなくてよかったのにッ…!



      そんざいしなくていい?
                  わたしは…わたしは?

























「いやああああああああああああああああああああああああっ!」



彼女は、ぼろぼろのソファーから身を乗り出した。


「はぁ…はぁ……ッ」


彼女はファントム。
オペラ座の怪人のバケモノだ。


「…ハハッ、またあの夢か……アハハ…」



——彼女が化物になってから、
  この夢は続いてきた。



「私は…必要ないのか……
 今も、昔も、このさきの未来まで…」




——いや、まだ…まだ、死ぬわけにはいかない。
  せめて、この子たちを…



「この子たちを、守らないと…」











     *            *          *









夜。

真っ暗に汚れている。

汚れているのは空?それとも、俺?



「……はぁ、なんでこんな事になったんだろうな」



俺が、イナズマキャラバンの上で夜空を眺めていると、

どこからか、不快音が聞こえた。



「…誰か、いるのか?」






   「「だーいせーいかーい♪」」






そこには、少年と少女がいた。

その二人は、どこかで見覚えのあった——…




「お前ら…もしかして、和奏の所の…」


「チルチルだよ!」  「ミチルだよ!」



そう、彼らは和奏の下に居た子供達。

その彼らを見て、風丸は疑問に思った。



「なんでこんなところに来ているんだ。」


「えへへー実はねぇ…」  「お兄さんに、ファントムを幸せにしてほしいの!」






————幸せに?




「どういう…事、だ?」


風丸の瞳に驚愕の色が浮かぶ。


「「その言葉の通りだよ?」」



二人は、幼い笑みを浮かばせると即座に去っていってしまった。



「ちょっ—…」



行ってしまった。


何も言わずに。




「どういう事だ…?」






しばらく茫然としていると、風丸はある物を見つけた。


この葉に隠れていた、冊子。



「あいつらが落としてったのか…?」



風丸は一枚、ページをめくった。






































4月17日


きょうはおかあさんとおとうさんといっしょに、こうえんへいった。

みんなといっしょ。たのしいな。うれしいな。

わたしがわらったら、おかあさんとおとうさんもわらう。

わらえるなんて、しあわせだね。





5月25日


おとうさんが、さいきんはかえりがおそいみたい。

けどおかあさんは、わらってまっている。

かえりはおそいけど、おとうさんがきたらしあわせなきもちになる。

かえってきたら、おおきなこえで「おかえり」っていうんだ。



6月7日


おとうさんがしゅっちょうにでかけるって。

おかあさんはすこしさびしそうにしたけど、おとうさんをわらってみおくった。

だからわたしも、おとうさんをみおくったの。




7月13日


おとうさんがかえってきた。

なのに、おかあさんはわらってない。

しかめっつらをしている。なぜだろう。




8月22日


へやのそとから、ずっとおこってるこえがきこえる。

おとうさんとおかあさん、けんかしてるのかな。

けんかしないで、ふたりとも。

かなしいよ。






9月5日


おとうさんがいえをでていっちゃった。

おかあさんがおこってわたしをなぐる。

いたいよ、おかあさん。やめて、ごめんなさい。




10月30日

しらないおとこのこに、サッカーをおしえてもらった。

とってもたのしい。

ひさしぶりにわらった。


ごめんなさい、おかあさん。

もう、おかあさんのものへはもどれない。

わたしはひとを、ふこうにするから。








「…これって、もしかして………!」


風丸は、冊子の拍子に目を向けた。




















“わたしのにっき”   『つきかわ わかな』