二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 土方十四郎の姉で御座います。【銀魂】 オリキャラ募集! ( No.189 )
- 日時: 2012/02/18 08:59
- 名前: 如月 ◆eZsQmZilro (ID: w0.JbTZT)
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桜の花びらは散り
蝉の鳴き声が響き渡り
紅い葉っぱが木を彩り
白い雪が世界を染める
——季節は巡る
——其れと同時に、思いも巡る
土方十四郎の姉で御座います【紅篇】
第十二訓「思いは巡る」
———十四郎SIDE
「っくそ……っ」
拳を壁に打ちつける度に、ポニーテールにされた黒い髪は揺れた。
どうしてだ、どうしてなんだ。渦巻く気持ちが俺を支配する。
ただ「行かないで」——そう言いたいのに口に出せなくてもどかしい。
俺の姉上は、戦争に行くと言った。
それを聞いた瞬間、俺は絶望を見たような思いだった。
どうしようもなく泣きたくて。
——俺は一人ぼっちになるのか。と、そう思った。
俺を護ってくれたのは何時だって姉上だった。
俺のことを好きだと言ってくれたのは何時も姉上だった。
姉上の笑顔に救われたのは紛れもなく俺だった。
やめてくれよ。お願いだから、行かないでくれ。
俺たち何時も二人三脚で歩いてきたじゃねェか。
何で離れたくないのに離れ離れになんだよ。
俺は、15歳になってからはどんなことがあっても泣かなかった。
泣くと男が廃る——そう思っていたから我慢していた。
けれど、そんな我慢などいとも容易く崩れ落ちて。
「……っ」
ああ、涙で視界が滲んで何も見えねーよ。
昔みたいに綺麗な布で涙を拭いてくれよ、姉上。
俺は、15歳初めての涙を流した。
そんなとき、カタリと物音がして、咄嗟に構える。
黒い影が俺の肩に優しく触れてきて、竹刀を下ろした。
——近藤さんが、俺の前で優しく微笑む。
それをみて、またボロボロと涙が零れ落ちる。
ああ、カッコワリーなあ俺。
「……トシ。」
「んだよ、近藤さん。何か用か?」
「気に病むんじゃない。朔ちゃんのことだから何か理由があって言ってるんだろう」
そんなの、知ってる。
姉上が理由もなく俺を突き放すなんてこと、するわけもない。
けれど、俺には「いってらっしゃい」だなんて、言えない。
そんな勇気なんて、ない。
「笑って送ってやれ。それがお前の使命だろう?」
「……俺には無理だ。笑える自信がねーんだよ」
「そんなこと知ったことじゃねえさ。きっと朔ちゃんはお前の笑顔を護るため戦争に行くんだろう。じゃあお前は笑ってやらなきゃな」
近藤さんはガハハと豪快に笑って、俺の頭に手を置いた。
「やめてくれよ。俺はもう子供じゃねェんだ。」
「ガハハ、お前はまだ子供だぞ!朔ちゃんが離れるたびに泣いてるやつは特にだ!
「近藤さん!」
俺は近藤さんに批難を被せながらも、心の内に誓う。
笑って送ってやる。
姉上をずっと此処で待っててやる。
そして、笑って迎えてやる。
それが俺に出来ることなのだと、近藤さんが気づかせてくれたから。
俺はたとえ泣いてしまったとしても絶対笑ってやる。
涙でぐちゃぐちゃの顔で、笑ってやるよ。
絶対に、誓うから。
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