二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 土方十四郎の姉で御座います。【銀魂】 オリキャラ募集! ( No.198 )
- 日時: 2012/02/20 19:05
- 名前: 如月 ◆eZsQmZilro (ID: w0.JbTZT)
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思い出すのは数々の思い出
弟以外いらないと思ったあの日
ずっと私の世界は止まったままだ。
あの日から、ずっと……
土方十四郎の姉で御座います【紅篇】
第十四訓「溺れる淡水」
あの日——十四郎と別れて一週間たった。
ある農村に貸して貰っている小屋で攘夷志士たちは暮らしていた。
それは勿論朔も同様で、朔は生活に心なしか慣れてきた様子だ。
此の一週間、戦争にはまだ参加していない。
ただ遠くの空から聞こえる砲撃音を無心に聞いていただけだ。
まるで戦争に対して他人事のように過ごし、まだ見ぬ戦争に不安感を抱いていた。
先程言ったように生活には慣れたが、まだ同じ志士とは慣れずに居た。
それには朔が女だということも含まれている。
男所帯である此処に紛れ込んだ女一人、相手になどされなかった。
女だというだけで戦いには役に立たないだろうと決め付けられていた。
朔は自分が女だというだけでそんな扱いをされるのに、少々イラついていた。
確かに朔は女だ。
しかし、何時もの志士たちの訓練の様子を見るに、其の実力はたかが知れている。
そんな弱者に自らが女だということで差別されるのには違和感があったのだ。
悶々と考えているうちに、視界を銀色——否、白色といった方が正しいか——の髪が支配した。
目の前にはいかにもだるそうな目付きをした少年が朔に団子を差し出していた。
「此れ、食えよ。」
「は?何を言ってるのだ貴様は」
「キサマじゃねー、俺は坂田銀時だ」
銀時は朔に半ば強引に団子を差し出すと、自らも其れを口いっぱいに頬張った。
彼によれば、食堂からパクってきたらしい。
躊躇いがちに口に運ぶと、みたらしの甘さが広がって思わず口元が緩む。
「うめーだろ?あ、そうだ。お前名前は?」
「私か……私は朔だ、土方朔」
「ふーん。じゃあ朔だな。俺のことは銀時って呼べよ」
「……銀ちゃん」
「……まあいっか。よろしくな朔」
彼はやはりだるそうに朔に微笑みかけた。
そして、団子を食べ終えると、朔の元を去った。
朔はその背中を見つめながら微笑んだ。
天井にはところどころ穴があいていて、その隙間から青空が顔を覗かせている。
此の空を十四郎も見ているのかと思うと、なんとなく笑えた。
「私にも友達ができたぞ」
——さかた、ぎんとき。
その名前を胸に焼き付けて、朔は目を瞑った。
こうして、私は戦争という海に溺れていく。
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