二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 土方十四郎の姉で御座います。【銀魂】 オリキャラ募集! ( No.217 )
- 日時: 2012/03/25 09:52
- 名前: 如月 ◆eZsQmZilro (ID: w0.JbTZT)
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悪の迷宮に迷い込んで
眠り姫は夢を見る
人を殺す、悪夢を見る
土方十四郎の姉で御座います【紅篇】
第十八訓「太陽の瞳に初夏は焦がされ」
「お前腕怪我してんじゃねェか。医務室行け医務室」
「はあ?こんな怪我舐めとけば治るだろ?」
もう先程泣いてしまったことは気にしていない様子の銀時が私の腕を指差して言った。聞けば医務室とは廊下に出て右側にある場所らしい。其処で治療してもらうのだ。
生傷の絶えぬ攘夷志士には必要不可欠な場所である。
けれどこんな小さな傷で行く必要などあるのか?そう言えば銀時は溜息をついて「常識だぞ」と呟いて説明し始めた。
「どれだけ小せェ傷でも菌が入ったら化膿しちまって腕が腐るのはわかるだろ?特に攘夷志士はそうだ。俺たちは今お世辞にも清潔とはいえねェ場所にいるんだ。菌が入る可能性は充分にある。わかったらさっさと行け!」
「ちっ、わかったよ」
銀時は説明し終えるなり大声で怒鳴って医務室の方角を指差した。
私が渋々歩き始めれば銀時は満足気に頬を緩ませて、腹が減ったと食堂の方へ体を向けた。
「失礼しまーす」
先程の部屋から数秒で医務室に着いた。恐る恐る木のドアを開ければ、中から「はい」とひとつ男の声。
少し気を張りながら医務室内へ足を進める。
中には栗色の長い髪を、十四郎のように後ろで高く結っている男。まるでどこかの話に出てくる王子様のような綺麗な顔立ちをしていて、その顔は優しそうに微笑んでいた。
「きみが最近入ってきた新人だね。俺は睦月遥(むつき はるか)。」
「私は土方朔だ。——睦月といったか、腕の治療をしてくれ。」
「遥でいいよ。俺も朔って読んでいいかな?」
「——ああ、蓮。」
遥は一層笑みを濃くして私の腕を手にとった。
「うーん、大した怪我ではないようだから、消毒するだけでいいかな」
遥は棚から何かの植物を取り出すと、その葉をゆっくりと腕の傷につけた。あまりの冷たさにびくりと震えると蓮はくすくすと笑う。
なんて綺麗な笑い方をするのだろうか。そう思った。
女よりも綺麗な顔は思わず見とれてしまうほど美しい。女装でもすれば私より男が寄ってくるだろう。
「……よし、できたよ。定期的に消毒しにきてね。あと痛みが悪化したり膿んできたようならすぐ俺にいって」
「ありがとう」
遥がにっこりと笑うから、私も思わず頬を緩めた。
それと同時に心がぽかぽかと暖かくなるのが分かった。どうしてか凄く嬉しくなって緩んだ顔を隠すように医務室を後にする。
これが一目惚れというものなのだろうか。いや、違う。私には恋にうつつを抜かしている時間はないのだ。もしこれが一目惚れだとしても私には関係の無いこと。どうせ、直ぐ収まるだろう。
けれど、どうか、赤い顔がばれていません様に。そう願う。
これが、睦月凛の兄——睦月遥との、出会い。
それは尊くも切ない、御伽噺。さあて、これから何が起こるのやら。
「——遥、」
鼓動は、速い。
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