二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 薄桜鬼   ———刹那の契り——— ( No.256 )
日時: 2012/08/20 14:15
名前: 亜鶴 (ID: 1LZEPC8Z)

第二十一話 「儚い命」



「土方さん、お茶持ってきました」
 そう言って、部屋に入り込む琴音。
「琴音か。めずらしいな、お前が持ってくるなんて」
 文机から目を離さず、驚いたような口調で土方は言った。

「千鶴ちゃんのお手伝いです。少しでもお役に立ちたいので」
 おぼんの上の湯のみを文机に置いて、少し後退りした。

 土方は置かれた湯のみを手にして、茶を一服した。

「おいしいですか?そのお茶、私が入れたんです。千鶴ちゃんには及ばないと思いますが……」

 自信の欠片が一つもない琴音を見て、土方は薄く笑う。

「おいしい」

「どうも」
 嬉しそうに琴音は微笑んだ。



「じゃあ私はそろそろ……」
 立ち上がって、障子の戸を開けた途端———。

 白いモノが部屋の中へ入り込んできた。

「あ…雪…」
 
 雪は琴音の掌に乗り、刹那に解けていった。


「儚い命…雪も人も似てる」
 切なそうに呟いて、琴音は部屋から出て行った。


(更新再開)
 *****


 琴音が出て行った後———

 土方は戸を開け、降り続く雪を見据えていた。


「儚い命…雪も人も似てるか」
 琴音の独り言を耳にした土方も唱えた。


 しばらく呆然と空を見上げていた。

 すると雲間から満月が顔を出した。


「ん…満月?」
 
 満月という言葉が頭の中をしつこく引っかきまわす。

「そういえば…初めて琴音に会った日、風間の野郎に…」


“次の満月の日迎えに行く”と言われていた。


「その次の満月の日っていうことは今日のことかっ!?」
 唐突に思い出したことに、土方自身焦っていた。



『土方さん、どうしたんですか?そんなに慌てて」
 いきなり背後から声をかけられる。

 バッと振り向くと———。

 沖田が立っていた。


「総司、ちょうどいい。お前、今から琴音を見張ってろ!」


 土方の焦り交じりの言葉に沖田は笑っていた。

「なんで琴音ちゃんを?それに僕は土方さんみたいな変な趣味持っていませんよ?」

 嫌味な口調で沖田はそう言う。


「ばっ誰が!変な趣味持ってるって!!??」


 沖田は溜息をついてからこう言った。
「土方さんに決まってるじゃないですかー」


「俺はそんな趣味持ってねぇっ!!とにかく、琴音を見張ってろ!風間の野郎があいつをさらいにくるかもしれねぇ…」


「風間……」
 ボソッと呟く沖田の顔には笑みが浮かぶ。


     

  
         続く


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