二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 薄桜鬼   ———刹那の契り——— ( No.282 )
日時: 2012/11/05 23:08
名前: 亜鶴 (ID: V9P9JhRA)

リメイク版 第一話 雪の華


 


 寒い夜だった。
 ヒラっと白い雪が降ってきた。
 それを例えるなら、雪の華。月明かりに照らされ、雪華は光り輝いている。
 宝石のように美しく、幻想的だった。


 でも直ぐさま——刹那に消える。
 幻を見ているようで、儚かった。


 ここは京の町。
 相変らず、夜の京は風情である。昼は商人や子供たちの声で、にぎやかなのだが、それと対照的に、夜の京は静寂に包まれていた。全くの別世界と思わされる。


 そんな中、ある店の戸が音を立て、開いた。
 中から少女と女性が出てきた。店の前で二人は向き合う。

「琴音ちゃん、お先に悪いなぁ。片付けやらしちゃって」と女性は申し訳なそうに言う。
 少女は、はにかんで、
「いえ、お菊はんに片付けなんてやらせられへん」と言う。

「おおきに。ほなさいなら」
 番傘を差し、上品に手を振る女性。体を帰るべき方向に向けると、そのまま歩き出す。

「お菊はん、ほなさいなら」
 愛想よく少女は遠ざかる背に声をかける。女性はちらッとこちらを見て、微笑んだ。その微笑につられ、少女も微笑む。

 いつの間にか、女性は遠くにいて、暗闇にのまれていった。
 少女は気が重そうに、溜息する。
(人手が足りないと言うのに、まぁしょうがないか。お菊さんは一番人気の舞妓さんなんだしね…私もいつか一番人気の舞妓さんになってみせるっ)と決意する。

 一番人気の舞妓は店のしたくや片づけをしないで、帰宅してよいのだ。
 店のしたく、片付け等は新入りの舞妓がやっている。
 この少女は新入りの舞妓であって、これからが一番たいへんなのだ。


 のれんをくぐり、店の中へ入ろうとした。


 突然。
 外から少女の腕が誰かに引っ張られた。
 少女は突然のことに驚くことしかできなかった。
 そのまま、無造作に外に引っ張られる。そこにはいかにも酒癖が悪そうな浪士が一人いた。
 その浪士の顔は真っ赤で、既に酔っていると分かる。

「おい、小娘!酒を用意しろっ」
 荒っぽい口調で、少女に言う。

(酒臭い。この人)
 少女はかけられた息に嫌な顔をする。
(こういう客はめんどくさい。追い払うか)

「あの…申し訳おまへんが、もう閉店の時間やので、お引取りください」と率直に断る。でも浪士は引き取ろうとしない。そして強い力で少女の腕を握る。痣ができるほどの痛さ。
「いや、痛いどす。離して——っ」
 嫌がるそんな少女を見て、浪士は笑っていた。

「じゃあ、違うところで飲めばいいっ!行くぞ」
 相変らず、強引な力で引っ張る。

「いやっ、行きたくおまへん」と叫んで、瞳からは涙が溢れ出ていた少女。

「舞妓の分際で、そんなこと言うなんて生意気なっ。痛い目に遭いたいか?」
 浪士は拳を握り、少女に殴りかかろうと脅す。

———そんな時だった。
 
『離してあげてください!彼女、嫌がってますっ』と少女と浪士の間を割って、少年が現れたのだ。少年は勇敢さを目に宿していた。

 浪士は少年を睨み、舌打ちした。
「何だ〜?小僧!うるせえぞっ!!!」と浪士の大声が静まっていた町に張り詰めた。

 少年は浪士を睨む。

「その目つきは何だっ!?生意気なガキ目!!」
 浪士はイラつき始めて、少女を地面へと突き飛ばす。

「きゃあ」
 ドンと大きな音を立て、少女は店の壁に背中をぶつける。
 
 痛そうに、眉を顰める少女を心配し、少年は駆け寄って声をかける。
 少女は顰めながらも、微笑む。
「大丈夫どす…」

 そんな少女を見て、少年は我慢できなくなった。


「あなたはそれでも男ですか!最悪です!女の人に暴力を振るうなんて、最低です!!」と言う少年。その姿は真剣そのものだった。

「その小娘が言うことを聞かないからだ!」

「だからって…暴力を振るうなんて最低です!彼女に謝って下さいっ」


「ふざけんじゃねぇ、俺は謝らねえぞ!!この生意気なガキ目!!他人の心配すんじゃなくって、自分の心配したらどうだ!!」と言って、浪士は鞘から刀を抜く。それに少年は戸惑い、目を瞑った。咄嗟に少年は自分の体で少女に覆い被さって、庇った。二人の頭上には浪士の刃があった。

 あとは振り切るだけ。
 振り切られたら———もう終わりだろう。

 けどその時だった。

「無茶をするなっ」と浪士以外の男の声がしたと同時に、何か倒れる音がした。
 閉じていた目を開けると、そこには浪士が倒れていた。二人の目の前には、刀を持つ男が立っていた。
「斎藤さんっ」
 少年は高い声で、その男の名を呼んだ。きっと仲間なんだろう。

 少年は安心し、覆い被さっていた自分の体をどけた。

「あの…、この人、斬られたんですか?」と少年は恐る恐る訊ねた。


「斬ってはいない…峰打ちだ…」
 男は冷淡にそう答え、刀を鞘にしまった。
「よかった…」と少年は安心した。
「僕なら、斬っちゃうけどな」
 突如、暗闇からもう一人、男が出てきた。なぜかニコニコ笑っていた。
 少年は「沖田さん、やめてくださいよー」と言い、親しげに苦笑いした。
 どうやらこの男も仲間なんだろう。


 少女は蹲っていた。
 少女が視線を正面に向けると、少年と目が合う。
 すると、手を差し伸べてきた。「大丈夫ですか?」と言いながら。

 その手につかまり、立ち上がる少女。
 少年の手は冷たく、小さかった。

 
「あの…助けてくださいまして、おおきにどした」
 丁寧に少年に向かって言う少女。
 少年はそれに頬を真っ赤に染め、「助けてくれたのは、斎藤さんですよ。私なんか何にも…」と言った。

 少女は少年と男に頭を下げる。
 頭を上げると、少年が「怪我していませんか?」と心配して訊ねてきた。

「いえ」
 咄嗟に袖の中に掌を隠す。
 掌からは血が出ていた。先程、突き飛ばされた時に地面に転がっていた石に軽く刺さってしまった。」でも傷はすぐ塞がり、癒えてしまった。血がついているのに、傷がないのは不自然と思われるのではないかと思ったから手を隠したのだ。

(まただ…またすぐに傷が塞がっている…どうしてなんだろう)
 少女は自分の身に起きていることに理解ができず、疑問に思った。
 いつも思うに、自分は普通ではないということだ。これは今まで、誰にも告げていない。彼女だけの秘密。


 少女は顔を強張らせ、考え込む。
 その様子を見ていた斎藤という男が訊ねてきた。

「どこか、悪いのか?」
「え?」
「顔が強張っていた…」
「あっ、すんまへん…」
 黙りこんで、また顔を強張らせた少女。それと同時に内心で溜息した。
(もうっ心配されてる。笑わなきゃ)
 嘘の笑顔を作り、話を切り替えようとする。


「私、琴音と申します。あの、今…お時間空いてますか?」
 自分の名を名乗り、訊ねてみる少女。
 三人はえ?という顔をした。
「私、ここの店の舞妓を勤めていまして、あなたたちにお酒をご馳走します。御礼がしたくって」と言うと、少年は「そんなっ、お礼だなんていいですよ」と遠慮した。

「いえ、させてください!」
 少女も粘り強く、頼み込む。

「じゃあ、飲ましてもらおうよ?」
 沖田という男がすんなり言う。店の中に入る気満々だった。
「待て!総司!寄り道などしたら、副長に叱られるぞ」と斎藤は引き止めた。

 沖田は呑気に「いいじゃん!千鶴ちゃん、入ろう?」と少年を誘って、のれんを潜ってしまう。「沖田さんっ待ってください」と言い、その後を少年は追う。


 店の外に残された斎藤は気が重そうに溜息をついた。
「まったく…」

 斎藤は琴音を見た。
「遠慮なくご馳走させてもらう。すまないな」
 申し訳なそうに微笑み、のれんを潜って行った。


(閉店時間なのに、お客さんを入れてしまった。私、馬鹿だな…)
 琴音も疲れきったような顔をして、落ち込みながら、のれんを潜った。



    


             続く…





第一回リメイク版読むのお疲れさまでした。
第二話も気にくわない表現方法なんで、第二回リメイク版も行いたいと思っております。
ですが、亀更新なんでご承知してください。


第一回リメイク版を読んで、感じたこと、アドバイス等ください。