二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 薄桜鬼   ———刹那の契り——— ( No.285 )
日時: 2012/11/24 10:13
名前: 亜鶴 (ID: V9P9JhRA)


リメイク版 第二話 舞う銚子


 三人をお座敷で待たせた。この間に料理の支度や舞妓をしていた。

「もうほかの子、帰ちゃったよ?琴音ー」ともう一人の舞妓がやってきた。琴音は苦笑いして、髪飾りをつける。

「お願い。一緒にお客はんの相手してくれへんかな?」
 琴音は申し訳無そうに頼み込む。
 その舞妓は深くため息をつき、いいよと承知してくれた。

 そんな舞妓に琴音は両手を合わして、謝る。


———こうして…他の舞妓は置屋に帰ってしまったため、琴音と椿(もう一人の舞妓)で三人の相手をすることになった。


 銚子を持ち、長い廊下を歩く。三人を待たせているお座敷は一番奥の部屋。音を立てず、静かに歩く。

 襖の前で端座する。そして静かに襖を開け、お辞儀する。
「「お待たせ致しました」」
「あたしは椿どす」と椿は名乗る。
 少年は彼女たちに見惚れていた。椿は少年の方を見て、微笑んだ。少年は照れて、顔を真っ赤にした。


 先に椿から部屋に入っていた。その次に琴音。
「うわぁぁぁぁっ」
 突如、琴音の叫び。
 
 琴音は段差に突っつかかり、空中に一瞬だけ浮いた。琴音の持っていた銚子も同じく空中を舞っていた。当たり前だが、その中に酒が入っている。こぼれ溢れ、少年の着物と袴にかかってしまった。

「痛てって…」
 琴音は俯せの状態で顔を上げた。
「あぁぁぁぁ———っ」
 少年の酒まみれの姿を見て、大声を上げた。

「申し訳ありまへんっ!!」
 すぐに起き上がって、少年の傍に駆け寄った。


「もうー、なにやってんのよードジ琴音」
 椿の呆れた声。
 沖田の大笑い。
 斎藤の冷静な態度。

 少年の酒まみれの着物と袴を慌てて、手ぬぐいで拭いた。
「あ、あのいいですよ」
 気の優しい少年は苦笑いで止めようとした。
 でも琴音は止めなかった。

(どうしよう…お客様がお酒臭くなってしまう。染みにもなってしまうし。どうしたらいいの!?)

「ねぇ、君」
 大笑いしていた沖田が声をかけてきた。
「はい!?なんでしょうか!!」

「この子が着れるような着物持ってない?」

「え?」
「持っていたら、貸してほしいんだけど…?」
 琴音は素早く「持っています」とうなづいた。
 でも苦笑いして「女性用どすけど」と訂正する。


「それでも構わない。今は性別関係なく着るものの方が最優先だ」
 斎藤は静かにそう言った。沖田もそれにうなづいた。
 少年は顔を真っ赤にして、ただ戸惑っていた。

「千鶴ちゃん、着替えておいで」
 沖田は微笑んで、そう言った。


———こうして少年は女装することになりました。



 続く。



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